「あーおーしー!!!」

竹林の中で小太刀を構え神経を研ぎ澄ませていた蒼紫は

その声に目を開ける。

そして苦笑すると声の主の方をチラリと振り返る。


か」


そう言うとずいっと蒼紫の目前にの顔が現れる。


「ねぇ、稽古しよっ、稽古vv」


同時に蒼紫の背中から同じように小太刀が伸びる。

蒼紫はすっとそのまま垂直に飛びあがる。

はつまらなさそうに行き場の失った小太刀を天に向ける。


「「陰陽撥止!!」」


そう言うとは蒼紫に向けて小太刀で攻撃する。

蒼紫は同じように陰陽撥止で迎撃する。

は小さく舌打ちすると蒼紫に向かって飛びあがるが、

蒼紫も負けずと拳法で迎撃した。


「まだまだだな・・・」

「フン、蒼紫もね。」


柔らかな竹葉の上でごろりと横になる2人。

蒼紫はふとに尋ねた。


「操は・・・」

「あの操ちゃんなら般若くんが見てるよ。
ちょうどお昼寝の時間だからね。般若くんが傍にいるとすぐに寝るから。」


安心してるんだろうねとが笑う。

先代から操を頼むと言われた蒼紫と

蒼紫はその言葉通り、操を可愛がっていた。

それはも同じで、操の姉代わり・母親代わりとして

面倒を見ていたのだった。


「操は般若が好きなのか?」

「いや・・・そうじゃなくて。懐いてるってこと。
いつも蒼紫の後ろを着いて回るの止めるのは般若くんでしょうが!」

「ああ、そうだな」

「全く、こんな天然に惚れた操ちゃんも可哀想だよ。」

「俺は天然ではない。第一、俺には想う女がいる。」

「へぇ、蒼紫に・・・でぇ!?」


驚くに蒼紫は何故驚いているのか分からない。

御庭番衆御頭とはいえ、男であることには変わりないのだ。


「ま、その女に俺の手助けなど必要なないだろうがな」

「そうなの?」

「ああ、手を貸すと言えば逆に攻撃されるだろう」

「あはははは、蒼紫がやられるっての?」

「そうだろうな、だが鈍い。」

「それじゃ蒼紫の片思いなの?」

「そう言うことになるのだろう」

「ま、蒼紫みたいな美男子に惚れられるなんてかなりの美人さんなんだろうね。
あ、でも操ちゃんには半殺しにされそうね。」

「ま、大丈夫だろう、操も懐いているからな」

「ってことは葵屋の人なのね!!!」

「ああ・・・・」

「お増さん?お近さん?」

「・・・・・・・」

「それとも他の女中の人???」


あれこれと女の名前を出すに蒼紫は苦笑すると

すっとの上に覆いかぶさった。


「なっ!何すんの!!」

「お前、自分を抜かしてないか?」

「えっ・・・」

「俺の言葉を思い出してみろ。」


じっと見つめられて恥ずかしい気持ちになりながらも

は先ほどまでの会話を思い出す。


蒼紫に手出しされて怒るであろう人物。

操に懐かれている人物。

葵屋にいる人物。

そして・・・

お増やお近など主要女中の名前にない人物。



「鈍いだろうが、は」


そう耳元で囁く蒼紫に、はびくっとして蒼紫を見やる。

極上の笑みで自分を見つめる蒼紫には真っ赤になる。

そんなの様子に満足したのか、蒼紫は両手での頬に触れる。


「俺が守るとは言わん。だが守られるだけの女じゃ面白くない」

「私がそうだというの?」

「ああ。」

「共に闘える女。俺と同じ考えを持つ女。
そういう女が偶然にも近くにいたということだ。」


軽く触れ合う唇が妙に心地よくて、はすっと目を閉じた。


、俺と生きろ。」

「いや。」

「そうか・・・」

「貴方が私と生きるのよ、蒼紫」


その言葉に蒼紫はフッと笑うと、力強くを抱きしめた。