見た目は本当にまだ子供なんだけど
一応、人切り抜刀斎なんて呼ばれてる。
そんな私も剣心と同じ人切り抜刀斎の一人。
有名な流派ではないけれど・・・
「…ん。……心!……剣心!!」
何かを考え込んでいたのか、はっとして剣心は声のする方を見る。
「あっ、ああ。何だ?。」
「何じゃない!新撰組が動き出したよ。」
「何処だ!!」
剣心は敵のこととなると信じられないくらい行動力がある。
「何処って、場所は分からない。恐らく桂さんが知っているんじゃないか?」
「桂さんが来ているのか?」
「ここの真下。」
「分かった!」
そう言って剣心は部屋を飛び出した。
「ふぅ…面倒だわ。」
は自室用として借りている部屋にいた。
殺風景な部屋。
あるのは机のみ。
「ほぉ、今日はやけに色っぽいな。
で、何が面倒だ?」
「こんなとこに入り込んで……貴方は馬鹿か?」
「お前程ではないがな、阿呆。」
本来そこにはいてはならない、いるはずのない人物がそこにいた。
そして、ゆっくりの隣に座る。
「で、何が面倒なんだ?」
「…煩いな。新撰組三番隊組長、斎藤一さん。」
「俺はお前の言っている事が何なのか聞いているだけだ。
抜刀斎。」
そう言う斎藤に、近くにあった愛刀【】の柄を握る。
刹那、斎藤の体は宙を舞い、後方に下がる。
空を切ったの【】は間髪入れずにもう一度斎藤の首を狙う。
が、斎藤はそれを紙一重で避けるとの両手を掴む。
「あ〜あ」
「フン、わざと遅く振っただろう。」
「分かった?」
「本気なら傷の一つでもある…俺も阿呆と言うことか…」
カランと音を立てて落ちるの刀。
「…お互いね。」
「で?今夜は女郎の真似か?」
「こんな傷だらけの醜い女郎がいたら見てみたい。」
「いや、お前は綺麗だよ。」
「変な奴だな、斎藤さんは」
「それに惚れたのはどこのどいつだ?」
「あははは、私ですね」
幕臣側と維新志士側
犬猿の仲の2人が恋仲とは誰も思ってはいないだろう。
「どうした?」
の体を引きよせ、顎を軽く掴み顔を上に上げさせる。
ゆっくりと近付いていく斎藤との顔。
が、やけにユラユラ揺れているに気が付き、
斎藤が動きを止めて声をかける。
「……」
…コトッ
「おい……」
「…………」
「おい!!」
「………すぅ………すぅ」
いきなり斎藤の胸に頭がぶつかったかと思うと、そのまま寝息を立て始めた。
斎藤は小さくため息をつくと自分の羽織をにかけると軽々と抱き上げて、窓に足をかけた。
「…………阿呆」
を腕に抱きながら斎藤は苦笑いをする。
そう言うと窓から跳んだ。
二刻後…
を抱き上げたまま、斎藤は自分の家に入る。
「…………やつれたか?」
寝室に敷いてある布団の上にを横たえる。
蝋燭の灯り越しに見たの姿。
ふとの髪を撫でながら聞こえないような小声で呟いた。
「、いい加減起きろ。」
「………………」
「おい!」
「………………」
無言のに斎藤は眉間にしわを寄せながら
さっさと自分の衣を脱いだ。
そして夜着に着替えると、の横に座る。
「…………よく人前で着替えられること」
「寝てた割にはよく見えてるじゃないか」
「二晩寝てなかったらさすがに少々体はきつい」
「たった二晩だろうが。」
そう言いながらの頬に触れ、斎藤は不敵に笑った。
「今日はやめて欲しいんだけど?。」
「馬鹿を言うな…せっかく女らしいお前がいるんだ。
頂かん手はないだろう?」
そう言うと斎藤は器用にの帯を解いていく。
「……だから疲れてるんだって」
「なら疲れついでだ。大人しく抱かれてろ。」
「…はぁ。……ゆっくり眠りたい。」
「俺の気がすんだら嫌でも寝ろ。」
ふっと蝋燭が消える。
夜の闇の中にゆっくりと二人の影が沈んでいった。
せめてこの一時だけは、ただの愛し合う二人の男女としての時間を過ごすために…