5… 逃げないのか?
4… 俺は止める事など出来ん
3… このまま何も抵抗などしないのなら
2… もう離さんぞ
1… ああ、時間だ
0… ほら、これでお前は俺のモノだ
任務を終えたシュラは、気だるそうに聖衣を脱ぐとシャワーを浴びる。
熱いお湯が頭から流れる。
この瞬間に仕事が終わったという安堵感と、
同時にもうすぐ来るであろう女の事を考えていた。
幼馴染の。
自分が聖闘士としてここに来た時からずっと一緒にいた。
いつからか、シュラはの事を一人の愛しい女として見ていた。
「・・・駄目だな・・・」
秘めていた想いは溢れんばかりで、もう止める事は出来ないだろう。
一度枷が外れてしまったら・・・だが
「限界だ・・・な」
そう呟くと、お湯を止め、バスタオルで体を拭く。
そして、まだ濡れる髪をタオルでゴシゴシと拭きながら
リビングへと向かうと、ソファにはすでにが座っていた。
「おかえり、シュラ」
「ああ、ただいま」
そう言って手近にあったシャツを羽織る。
「お前も暇なんだな、」
「酷いな〜シュラは。幼馴染が任務を終えたから出迎えてあげてるってのに」
そう言いながらポイっとペットボトルをシュラに投げる。
シュラはパシっといい音を立ててそれを受け取ると、
キャップを外してそれを喉を鳴らしながら飲む。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・何だ?じっとこちらを見て」
自分を見るの視線に、シュラは飲むのをやめてを見る。
「いや・・・シュラって結構エロいよな〜って」
「はぁ?」
「いやね、ほら。胸板とかさ〜ただ水を飲んでるだけなんだけど、エロいって」
シュラはくくくっと笑いながら、の横にポスっと座った。
そしておもむろにの顎を掴むと、
くいっと自分の方を向けさせた。
「シュっ・・・シュラ!?」
「何だ?」
「ちっ・・・近い!!顔!!」
「そうか?」
シュラの端正な顔が今にも触れ合いそうなくらい近くにある。
は思わず顔を赤らめた。
その様子に口元を緩ませたシュラだったが、すっと真顔になってを見た。
栗毛色の髪を高く結い上げ、白いうなじがシュラの目に付く。
長い睫毛に、蒼い瞳、ほんのりと桃色の唇が愛しくて・・・。
ふわりと香るがいつも付けている香水の香りがシュラの鼻腔を付く。
甘いの香り。
自分を真っすぐ見つめるシュラに、は動揺を隠しきれなかった。
「な、何!?」
「、お前が欲しい」
「な、何冗談言って・・・」
「冗談だと・・・思うか?」
切れ長の目がを射抜く。
真剣そのもののシュラの目に、は言葉がうまく出ない。
「あ・・・う・・・」
「お前はいつも俺の事を幼馴染と思っているのかもしれんが・・・」
「え・・・」
「俺はお前の事を一人の女として見ている」
「シュ・・・ラ?」
「いつもいつも・・・お前は俺の気持ちなど知らないままでここに来ていた。」
どれだけ苦しかったと思う?と言いながら、シュラの腕はの腰へと廻る。
「逃げるなら今だぞ?・・・枷が外れたら俺は止める自信も、そのつもりもない」
「シュラ・・・あ、あたしは」
「どうする?」
「え・・・と・・・シュラの事好きだよ、で、でも・・・」
でも男性として見た事がないと叫ぶにシュラはニヒルに笑う。
「なら思ってみろ・・・今すぐにだ」
「そんな事言われても・・・シュっ・・・」
「5つだ」
「えっ?」
「5つ数える間に答えを出せ」
ゆっくりと顔を近付けるシュラ。
ソファの端に逃げようとしたが、シュラの腕で逃げられない。
「そ、そんな!」
「cinco」
今までシュラの事は幼馴染としか思っていなかった。
「ちょっ!?」
「cuatro」
でも・・・本当は気付いていた。
「まっ・・・」
「tres」
シュラの事を幼馴染ではなく一人の男性として思っていた事を。
「待ってって!!」
「dos」
そしてシュラも自分を一人の女として見ている事を今知ったばかりなのに・・・・
「シュラ!?」
「uno・・・時間だ」
真実を知ってしまった今、もう止められない。
「シュ・・・・っ!?」
少し強引に、の後頭部を手で引き寄せ自分の唇を重ねる。
熱い熱い唇。
初めは軽く啄ばむように・・・だが次第に深く絡め出した。
「ん・・・っ・・・はっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・・・・・・・・」
名残惜しそうに唇を離すシュラ。
肩で息をするは、目元を潤ませながらシュラを見た。
「・・・・逃げられるわけ・・・ないじゃん」
「ふっ・・・」
の言葉に勝ち誇ったかのような表情のシュラ。
そして・・・
「No quiere ser mi novia?」
(俺の恋人にならないか?)
「・・・順番違いませんか?」
棒読みで言うにシュラはくくっと笑う。
「そうだな、だが答えは?」
「・・・・Si」
(はい)
その答えに満足したのか、シュラはまたにキスをした。
そのままの身体を抱き上げると、器用に扉を開けて寝室へと向かった。
「シュラ・・・あ、あのね」
「・・・何だ?」
首筋に埋めた顔を上げて、シュラはを見た。
「No te alejes de mi.」
(離れないでね)
「Si amada.」
(分かった、愛しい人)
重なる二つの影。
響くのは二人の甘い吐息だけ・・・