「お前が好きだ」
「お前以外誰がいると言うんだ?」
「俺のところに来いよ」
カノンにこうも毎日顔を合わせる度に言われると
免疫がついてしまう。
今日もは少し落胆気味に12宮を登り始める。
金牛宮を通り越し、双児宮へと差し掛かる階段で
遠く日光に照らされる黄金の髪が揺れるのを見つけると
さらに深いため息をついた。
「よう、」
「・・・・はい、おはようございます、双子座様」
わざと星座名でそう言うと、またコツコツと小さな音を立てて階段を上がる。
その言葉に苦笑する男は、ゆっくりと身体を双児宮入口の柱へと預ける。
ジーンズに白いYシャツを着崩して立っているその男は
風になびかせた髪を少しうっとおしそうに手で押さえる。
「今日は休みではないのか?」
「弟に呼ばれてるの」
「ああ、アフロディーテか?」
「・・・・・貴方、サガね?」
「・・・・・・ふっ、」
そう言って口元に手を当てて笑う双子の兄にははぁっと盛大なため息をついた。
「よく分かったな。」
「ええ、二言目ではっきりとね。貴方も悪趣味だわ、カノンの格好を真似するなんてね」
「たまにはこんな恰好も悪くはないな。しかし、あの愚弟もよほどお前に関心があると見えるな」
「・・・・・さすがに毎日言われると免疫付くわよ」
は自分の栗毛色の髪をふわっと風に靡かせて笑う。
サガはその姿に鼓動が高まる。
双子と言うのは本当にやっかいだな・・・
まさか自分までの事を想うなど思ってもみなかった。
「、お前、カノンの事をどう思っているんだ?」
「んー?」
「好き・・・なのか?」
サガの言葉に顎に手をあてて、唸りながら考える。
「嫌い・・・じゃないけど・・・恋愛の好きとも違うのかな?」
「それは困るな」
ふと顔を上げると、サガと全く同じ顔が双児宮から出てきた。
ブラックジーンズに白いYシャツ。
ジーンズの色が違うだけで、あとは全くサガと同じ格好のカノンの登場に
はまた頭を抱えた。
「毎日言っているのに、何故伝わらない。」
「毎日言われてるから免疫付くの」
それにしても本当に双子って同じ顔なのねっと
交互にサガとカノンを見る。
でもよく見ると同じ瞳の色でもサガはこのギリシャの空を映したかのような蒼
カノンは地中海のような海の蒼
「・・・、先ほどの言葉は本当か?」
「何が?サガ」
「カノンに対して恋愛の好きとも違うかもというのは」
「お前はどうしてそう・・・」
「うん、そう・・・なのかな?よく分からないんだけど・・・」
「ならば、このサガにもまだチャンスはあるのだな」
「ふぇ!?」
「なっ、サガ!?」
くんっとの腕を自分の方へと引っ張ると
そっとの額にキスを落とすサガ。
そしてカノンにもはっきり聞こえる声での発言。
「、私はお前が好きだ」
その大胆な行動に固まるとカノン。
はサガの言葉に顔を真っ赤にして未だ固まったまま。
同じ声で同じ顔なのにサガに言われるとは思っていなかったせいなのか・・・
カノンならば免疫があるのにも関わらず
サガの言葉にすっかり動けなくなってしまった。
しかし、カノンはサガを睨む。
そしてをサガの腕から奪いとると、の首元に顔を埋める。
「ちょっ!カノン!?」
「俺の気持ちはサガには負けんぞ?」
そう言ってのうなじに唇を這わすカノン。
その行動にゾクリとした感覚を覚え、の顔はさらに真っ赤になる。
クスクスと笑いながら最後にカノンはの耳元に熱い吐息を吹きかけながら
「俺を選べよ、」
とつぶやいた。
それを面白く思わないサガ。
もはや時間や場所など関係ない。
カノンからを奪い返して今度はその唇にキスを落とした。
「好きだ、」
ここまで来たら、もうの思考回路は爆発。
何も考えられず、サガのキスを受ける。
カノンはそんなサガに激怒してしまう・・・
ついでに小宇宙まで燃やして・・・
「お、おのれサガ!!は俺のものだと言っているだろうが!!」
「ふん、まだの感情は恋愛とも違うのではないのか?お前の一人よがりだ、愚弟よ。」
「やるか!!」
「お前が望むならな受けてやろう!!」
「勝った者がを恋人にする条件だ!」
「それは絶対に勝たねばならないな!」
「やっ、やめてよ!!二人ともーー!!!」
白昼堂々の恋愛合戦・・・
勝者はサガなのか・・・
それともカノンなのか・・・
天高く上った太陽だけがその答えを知っている・・・