嘘をつくのは本当はとても苦手。
だけど大好きな貴方の為に
最後の嘘をつきます。
「今、何と言った?」
「・・・・・ごめん」
「!!」
バンとらしからぬ行動を取るサガにはビクッと肩を震わせる。
「私を愛していると・・・ずっと一緒にいると言ってくれたではないか!」
「・・・・だって、何も見えてなかったから。」
そう言って、は目の前にある紅茶を飲む。
「私は、貴方を愛していて・・・盲目になっていただけ・・・」
「・・・・・」
「・・・・・だって貴方怪我してたのに無理して買い物に付き合って・・・」
「先日の怪我のせいと言うか!?あれは大した事はないと言ったはずだ」
「・・・・・ごめん」
謝ってばかりのにサガは苛立ちを隠せない。
コーヒーだってもう何杯も飲んでいる。
サガが怪我をして帰ってきた日。
双児宮へと書類を持ってきた女官達がいた。
『あんたみたいなのがいるからサガ様は任務に集中出来なかったのよ!!』
『それなのに・・・どういう神経してるの!?仕事なんかさせて!!』
『あんたみたいなのがいるからサガ様がお可哀そう!!』
『よほど私達の方がサガ様の為になる事が出来るわ!!』
サガに熱狂的な恋愛感情を持っている女官達に言われた言葉が脳裏をよぎる。
本当にそうなのかもしれないと思った。
カタンと音を立てて顔を上げると、目の前には濃紺が広がる。
同時に抱きしめられていた。
「はっ・・・離して!!」
「!!」
「離し・・・て・・・っく・・・っつ・・・」
「・・・・・嫌・・・・なのか?」
「っ・・・」
「私に触れられる事すら・・・もう嫌になったという訳か・・・」
【違う!!】
そう叫びたかった。
でもそれはサガの為にならないとは思っていた。
サガに抱きしめられると安心する。
サガの温もりが何よりも心地いい。
だけど・・・
「・・・そ・・うよ・・・嫌いになったのよ!!」
の言葉に、サガは無言のままの身体を離すと、リビングから出て行こうとする。
「サガ・・・」
「私は・・・お前を愛している・・・例えお前に忌み嫌われようとも・・・」
それだけ言うとサガはリビングを出て行った。
そのまま仕事に戻るのだろう。
そして今日は帰ってこないはずだ。
はしばらくその場で泣き崩れていた。
もう日が暮れる。
何時間も泣いていたせいで、目は真っ赤になっていた。
「・・・・嘘・・・ついてごめんなさい」
嫌いなんかじゃない・・・本当に愛している。
は自分の部屋に戻ると、支度をし始めた。
ここを出て行こう。
遠くに、どこかしばらく旅でもして、それから身の振りを考えようと思った。
ふっとサガからもらったペンダントが揺れる。
サガとお揃いのペンダント。
ゆっくりとペンダントトップを指でなぞると、はペンを握った。
宛て名はサガ。
書き終えると、それをリビングのテープルの上に置いた。
「さよなら・・・」
そう双児宮の入り口に立って言うと、振り向かずに駆けだしていった。
次の日の午後、サガは帰ってきた。
「出て・・・行ったのか・・・!」
誰もいないリビングで見つけた蒼い封筒。
サガは急いで封を開ける。
『サガへ
本当にごめんなさい。
私にはこうするしか出来ません。
私が居ても何もしてあげられない・・・だから出ていきます。
色々と言われる事もあったけど・・・
貴方は私を側においてくれた、嬉しかった。
今までありがろう
最後に・・・貴方に嘘をついてしまいました。
貴方を愛しています
』
くしゃりと手紙を握りつぶす。
サガはそのまま双児宮を出た。
しかし、双児宮の入り口で足を止める。
「・・・・・カノンっ!!!」
そこに立っていたのは海界に行っているはずのカノンだった。
「よぉ、愚兄、何やってんだ?」
「お前には関係ない・・・」
「ならもうここにはいないぜ?」
「っ!!」
「お前が帰ってくる前に行っちまったよ」
そう言って空を指差す。
「なっ!!カノン!貴様!!!」
「おっと・・・に頼まれたからやった。それだけだぜ?」
カノンに拳を向けたが、それを交わしながらカノンは言った。
「どこに・・・」
「知らねぇよ・・・それに知っていてもお前には教えられんな」
「何!?」
「お前、が何言われてたのか知らないんだろ?」
「!?」
「ここにくる女官どもに散々言われて泣いていたの知らないんだろ?」
「な・・・んだと!!」
「はお前の為に出て言った。の事はほっとけよな。」
まぁ、お前らはもう別れたんだからなとカノンは最後に付けたして双児宮に入って行った。
残されたサガはダンっと柱を殴る。
「・・・・、私は・・・お前と共に歩んで行きたかっただけなのに・・・」
これも自分へ与えられた罪なのかと天を仰いだ。
サガの心中とは裏腹に、今日も聖域の空は晴れ渡っていた。