鳴り止まない鐘の音が頭に響く。

いくら止めようとしても、

決して止まらない。


毎晩、毎晩その鐘の音に苛まされる。

教会の鐘の音・・・

死者を弔う鐘の音・・・・

そして死者への悲しみの声・・・

その全てが一つの鐘の音と重なる。


「うるさい・・・」


そう呟いてみても、止まらない。


「もう・・・いい加減にしてよ・・・」


頭を抱えて、私はベッドにうずくまる。

一体いつからこの音は鳴り響いているのだろうか。


そう考えてもキリがないことは知っている。

私はふぅっとため息をつくと、素足のまま部屋を出た。


十二宮を見渡せるアテナ神殿。

そのアテナ像の足元に座り込む。

春とは言え、まだ夜は冷える。

私は上に一枚引っ掛けてこなかった事を少し後悔した。


しかし、変に興奮し熱くなっている身体には

この気温は丁度よかった。


ふと見上げる空。

そこにはたくさんの星が瞬いている。



「・・・・・・また眠れないのか、?」

「・・・・・・・・・・・・」

「風邪引くぜ?・・・・・・そんな薄着で。」

そう言いながら己のマントを私の肩にかける。

「こんな時間まで何をしているの?」


私がその人物を見上げると、彼は苦笑しながら答える。


「仕事・・・。」

「ふーん。聖衣まで纏って?」

「聖衣を纏わねぇといけねぇ仕事なんだよ。・・・今終わった・・・」


そう言ってにやりと笑う彼・・・・デスマスク。

蟹座の聖衣が星の瞬きを受けてキラキラと輝いていた。

と急に視界が高くなる。

デスマスクは私の身体を抱き上げると、そのまま12宮を降りていく。

階段を降りていく中、デスマスクは私を見る。

私は眉間に皺を寄せて時折ビクっと身体を震わせた。



「・・・・・・・・・・デスマスク、うるさい・・・」

「あのな・・・・主語と述語だけいうんじゃねぇ。」

「鐘・・・・」

「ああ?」

「鐘が鳴り止まない・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ・・・・」


私の言葉にデスマスクは黙る。

鐘の音が何なのか知っていたから。

それは過去の話。

思い出の中の話だが、私にとってそれは今も現実の事。

かつてあった出来事に未だ縛られているのだ。

巨蟹宮についたデスマスクは私を寝室へと運ぶと

自分は聖衣を脱ぎ、シャワーを浴びに行った。

私は寝室のベットの上で身体を丸くして震える。


「・・・・・・・あたしは・・・・・・悪くない・・・・」

「ああ、、お前は悪くないぜ?」


その声に顔を上げる私の視線の先には、腰にタオルを巻き、

まだ水の滴る髪を掻き揚げるデスマスクの姿。

デスマスクはそのままベッドサイトに腰掛けると、

タバコを一本取り出し火をつける。


「デスマスク・・・」

「お前は悪くねえ、生きられなかったんだろう?
生きるために必要なことだ。」


そう言いながら私の頭を撫でる。


「・・・・・・・・・デスマスクは強いんだ・・・・・・・」


そう言ってぎゅっとデスマスクの空いている腕に掴まる。

デスマスクは紫煙を吐き出すと火を消し、

私を強く抱きしめた。


「そうでもないさ、殺した奴の事を忘れるようにまた殺す。
・・・・・結構きついもんだぜ?には分かるだろう?」


そう言って私の首に顔を埋めた。

私は頭の中で鳴りやまない音に対して苛立ちを感じながら

ふと呟いた。





「それはとてもつらい作業よね・・・・」