どうしても忘れられない人がいる。
私はその人の事が大好きで・・・
でも、その人は私を置いて逝ってしまった・・・
悲しみに打ちひしがれる私を救ったのは・・・
同じ顔で同じ声の貴方・・・




「・・・どうした、。」

「あ・・・カノン様。」

「ぼーっとしていた。・・・何か考え事か?」

「何でもないんです、カノン様。」

はそう言ってふわりと笑う。
カノンは、を後ろから抱き締めた。

「カノン様・・・////」

恥ずかしそうに頬を赤らめ、は微笑む。
そんなにそっと唇を寄せると、静かに瞳を閉じた。

「・・・・・・・・・カノン様?」

突然カノンが顔を離し、じっとを見た。

、俺は・・・お前が好きだ・・・」

「カノン様・・・突然何を・・・」

「いや、急に思った。最近、が考えているのはサガの事ではないのかと。」

カノンはそのままを強く抱き締める。
とサガ。
二人は恋仲だった。
いつもサガが嬉しそうにとの事を話していた。
も、執務が忙しいサガに対し、尊敬こそすれなにも文句は言わなかった。
そんな二人はどう見ても仲睦まじかった。

が、悲劇は急に訪れる。
サガの反逆、そして死。
それによっての精神は深く傷付いた。
その傷を癒していたカノンは、いつしかにサガと同じ気持ちを抱いた。
そして、そのカノンの優しさに触れ少しずつ笑顔を取り戻した
二人は愛し合うようになっていた。

「・・・、俺はサガではない。だが、サガ以上にを愛している。」

「カノン様・・・私も貴方をお慕いしております。」

「本当に・・・俺の側に・・・いてくれ・・・」

「はい・・・」

そう言って微笑む
カノンはふっと笑った。




カノンが急にそんなことを聞いた理由。
は知らない。





今夜もカノンはその言葉を聞いていた。

『ん・・・サガ・・・さ・・・ま』

隣で眠るが口にした言葉。
きっとまだサガを愛しているのだろう。
普段は隠しきれても・・・
こうして眠っている時の言葉の方が真実に近い。

「・・・まだ・・・忘れられないのか・・・そう・・・だよな」

カノンは髪をかき上げ、ベッドから降りた。
夜風になびく己の髪。
ふと見上げた空には満天の星。

「・・・サガ、どうして逝っちまったんだ。」

がサガを愛している事は知っていた。
けれど、それでも欲しいと思った。
サガとカノン。
同じ顔。
同じ声。
同じ姿。
が自分にサガを重ねていることは知っている。
それでもカノンはを愛している。

「・・・忘れられないのなら・・・忘れなくていい・・・」

カノンは寝室に戻り、に囁く。

・・・いつか・・・俺を本気で愛してくれれば・・・それでいい」

心の奥底にしまうべきは己の心。
しかし、そんな心も・・・
眠っているときには・・・
自然と溢れ出す。
それが、本心なのか。
カノンはを抱き締めたまま瞳を閉じる。

・・・愛している・・・」