もう一度、触れる事が出来るのなら・・・
例えこの身が堕ちてもいい。
貴女に逢いたい・・・
願うはただそれ一つだけ・・・
だからもう一度告げよう・・・
貴女にこの想いを・・・
双児宮。
一人朝を迎えるサガは、しばらくの間ベッドから動けなかった。
「・・・・・・・・・まだあの場所にいるだろうか・・・」
サガはそう呟くと瞳を閉じた。
サガの言う場所は聖域から間もない小さな小屋。
はそこで一人薬草を摘んで生計を立てていた。
よく聖域に来ては薬草を渡す。
黄金聖闘士達は皆、の持ってくる薬草を好んでいた。
サガもその一人だった。
何度か逢ううちに自然と引かれた。
まっすぐな瞳で物事を見る彼女を愛した。
「・・・・・・サガ、起きているのか?」
「・・・カノンか・・・何だ?」
カノンはドアに背を凭れさせ、腕を組んだままサガを見る。
「お前、やつれてるぞ。・・・ちゃんと休んでるのか?」
「くくっ、お前が私の心配をしてくれるとは・・・」
カノンはそんなサガの言葉にしかめっ面をすると、
すぐにふんとそっぽを向いた。
「・・・・・・・・・が来ている。」
「・・・・・・・・・・・・」
「サガ、お前行かないのか?」
「・・・・・・・・・・・」
サガは黙ったまま、拳を握り締める。
そんなサガにカノンは苛立ちを隠せなかった。
「サガ、惚れた女に本心打ち明けずにいるとは情けないぞ!」
「・・・・・・・・・・」
「お前、が大事過ぎるあまりに別れるなんて言ったんだろう?
自分の立場上、これ以上悲しませないために。」
「・・・・・・・・・何が言いたいのだ・・・」
冷たい視線をカノンに向ける。
しかし、カノンはその視線を受け止めながらも言葉をやめなかった。
「それはお前の我侭なんだよ!が何故お前といたと思ってるんだ?
聖闘士だからじゃない、教皇という立場の者だからでもない。
サガ、お前だからだ!!他でもない、サガ、お前自身だからは愛してるんだよ!!」
「・・・・・・カノン・・・・・・お前・・・」
「だてに双子はしてない。俺だって・・・を愛していたんだからな・・・
だが、お前がそのままなら俺はもう隠しはしない。・・・は俺が幸せにする。」
カノンはサガに背を向けて言う。
諦めの口調でカノンは言うと、すっと部屋を出て行こうとした。
「まっ・・・待て、カノン!は・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
サガの問いに答えることなく、カノンは部屋をあとにする。
己の拳をぐっと握り締めると、サガは勢いよくベッドから降りた。
向かう先はただ一つ。
サガは手近にあったシャツを羽織るとその場所へ翔けた。
「・・・俺の気持ちは知っているだろう?」
カノンはと聖域近くの池にいた。
ざぁぁぁっと風がとカノンの髪をなびかせる。
は少し俯いたまま、ようやく口を開いた。
「カノン・・・私は・・・!!!」
ふいにの動きが止まる。
カノンはを抱きしめていた。
「分かっている・・・はサガを愛していることくらい・・・。
の幸せはサガといる事で初めて成り立つんだよな・・・。
・・・・・・だからサガにはいい薬になるだろうな・・・この状況は・・・。」
「えっ?何のこ・・・・・・!!!!!!」
が続きを言う間もなく、カノンがを抱きかかえ宙へ飛ぶ。
ドォォォォォンッ!!!!!
大きな爆発音と共に、今までカノンとがいた場所には大穴が開いていた。
「きゃっ!」
「・・・・・・・・・馬鹿か・・・あいつは・・・」
すとんと降り立ち、視線を向けた先にはサガが両手を前に出していた。
サガの周りには小宇宙が立ち込めている。
「馬鹿か!!お前!!に何かあったらどうするんだ!!!」
「私のから離れろカノン!!この愚弟が!!!!!
・・・・・・ギャラクシアンエクスプロージョン!!!」
サガにカノンの言葉は届かず、本気で攻撃を仕掛けてくる。
カノンはそれをかわしてくが、なにせ腕のなかにはがいる。
思い通りよけることが出来ない状況だった。
「わわわわっ!あいつ本気で切れてやがる!!」
ドォォォォォォン!!ドォォォォォォン!!!!
「くっ!!うわっ・・・・・!!っ!?」
爆風で思わず腕の力が抜け、が宙を舞う。
「きゃぁぁぁっ!!サっ・・・サガ!!止めてぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「!!!!・・・・・・!!!!くっ・・・しまっ・・・」
の叫び声に自分を取り戻した瞬間、手元が狂ってしまった。
サガの放つ小宇宙は、そのままを目掛けていく。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「!!!!!・・・・・・・・ギャラクシアンエクスプロージョン!!!!!」
「アナザーディメンション!!!!」
カノンがとっさに放ったギャラクシアンエクスプロージョンと、
サガのアナザーディメンションのおかげで、は攻撃を受けずにすんだ。
「「!!」」
二人はに走り寄る。
はよろりと立ち上がるとサガの目の前にきた。
そして・・・
パチンッ!!!!!
「!?」
「・・・・・・・・・馬鹿!!!!」
頬を打たれるのと同時に抱きしめられる。
サガは呆然としていたが、カノンがぽんと背中を叩いた事ではっとした。
「お前、を殺す気だったのか??」
「あっ・・・いや・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「全く・・・、サガはお前をこれだけ想っているようだ。
実の弟を殺そうとするほどな・・・くくくっ、じゃぁなっ!!」
「まっ・・・待てっ!!カノン!!!お前・・・!!!」
後ろ手に手を振りながら去るカノン。
サガの頭に直接声が響いた。
【大切にしろよな〜馬鹿兄貴!!】
「・・・」
先程からずっとサガに抱きついたままのは何も言葉を発しない。
サガはそっと壊れ物でも触るようにを抱きしめ返した。
「・・・・・・私は・・・お前を悲しませたくなかっただけなのだ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから・・・私は・・・・・・」
「馬鹿だよ・・・・・・」
ふっと顔を上げてサガを見つめるの瞳からはいくつもの涙が零れる。
サガはその涙をそっと唇で拭う。
「・・・もう・・・偽る事ない私の想いを聞いて欲しい・・・」
「サガ・・・・・・・・・」
「私は・・・・・・」
そう言いながら、サガの唇はの唇と重なる。
「愛している・・・もう二度と離しはしない。・・・、永遠に・・・愛している」
貴女に本当の想いを告げよう。
偽りのない・・・この心からの想いを。
愛してる・・・
愛している・・・・・・
貴女だけを・・・
貴女のその温もりも・・・
その全てを愛していると・・・
今、もう一度自分から・・・・・・