左の耳にある赤いピアス

今まで流した悲しみの涙

左耳にある透明なピアス

これからの幸せの涙






ゆっくりと扉を開くと、そこにはソファで寛いでいる愛しい人の姿がある。

何か疲れているのだろうか・・・

そんな後ろ姿を見ながらもアイオリアは声をかけた。


、疲れているのか?」

「あ、アイオリア。ううん、疲れてないよ?」


そう言って振り返るは極上の笑みを浮かべる。

その笑みに、アイオリアも微笑み返すと、持っていたカップを渡して

自分もの隣へと座る。


「アイオリア・・・」

「何だ?」

「あの・・・・ね?」

「ん?」

「・・・・・・・・かも」


下を向いて何やら小声で言うに、アイオリアは顔を近付ける。


「何だって?」

「・・・・・たかも」

「??・・・ど、どうしたっ?」


次第に真っ赤になっていくに、アイオリアはの額に手を当てる。


「熱はないってば!!」

「だが、の顔が真っ赤だ!もし風邪なら早く治さねばならんだろう!!」

「いや、そうじゃなくて・・・・」

「じゃぁ、何だ!?!?」

「・・・・・・赤・・・」

「赤!?」


意を決したように、顔をあげてアイオリアを見る

そして・・・


「赤ちゃん!!!」

「ぁ・・・・・・」


固まるアイオリア。

グルグルと頭の中が混乱し始める。

と時間を共にし始めてもう2年。

同じ部屋で毎日寝ているし、もちろん、恋人として愛情交換もしている。

今までそんな事を考えていなかった分、アイオリアは思わず小宇宙全開で悶え始めた。


「ちょっ・・・ちょっと!!アイオリア!!」

「こ・・・ここここここ」

「こ?」

「子供!?俺に・・・子供!?」

「あの〜」

「は、ははっ!!そ、そ、そうだよな!!」

「アイオリア〜?」

「し、ししししかしだな・・・うん、そうだよな!!」


顔面真っ赤にしながらも完全に暴走し始めているアイオリア。

しかも口に出している事が近隣の宮の主に聞こえているとも知らずに突っ走る。


「あ、お、男か!?男ならば鍛えて聖闘士の道をだな!!」

「お〜い」

「もし女ならば嫁にはやらんぞ!このアイオリアを倒した男のみ娘をやる事にしよう!!」

「・・・・貴方を倒せるのはここの黄金聖闘士かアテナだけでしょ・・・」


はぁと盛大なため息を付きながら、もうどうにでもしてくれと言わんばかりの表情の


「ね、アイオリア。産んでもいいの?」

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、当たり前ではないか!!」

「嬉しい!」


ぎゅうっと強くを抱きしめるアイオリア。

そしてその頬に優しくキスを落とす。


「元気な子を産んでくれ!」

「まっかせなさい!!」

「色々とあったが・・・」

「これからも色々あるよ?」

「ああ、だがこのアイオリア。命にかけてもと子供を護って見せる!」

「頼りにしています。お父さん?」


パチンとウインクをするに、顔を真っ赤にするアイオリア。

恋人でもこれほど赤くなってしまうのはまだまだ未熟だと兄に言われていたのだが

それでも愛しい・・・可愛い恋人の行動だから仕方がない。


「そ、そうか!俺はお父さんになるのだな!!」

「そうだよ〜」

「ならばはお母さんか!!」

「・・・・当たり前でしょうが・・・」


またしても暴走し始めるアイオリアだったが

その様子を今度はあきれるでもなく、微笑みながら見つめる

すでに母親の顔になっていた。


「と言う事は・・・!今から寝ろ!」

「ええ!?!?」

「身体を冷やしてはならん!」

「ちょちょちょっと!!」


問答無用と言いながら、アイオリアはを抱きかけると

そのまま寝室へと連れて行った。








「・・・・何事かと思ったが・・・」

「・・・・・」

「あれだけ女に免疫ないと思っていたんだが、アイオリアも隅には置けんな」

「共に夜を過ごすとなれば当然の成り行きであろう」

「お前はそれしか言えんのか!?この似非仏陀め!!」

「ほぉ、どこの六道に落ちるかね?」


デスマスクとシャカが獅子宮の入り口付近で話をする。

口では色々と言っていたがその表情は友の幸せを心から祝福するものだった。


「「しかし・・・小宇宙くらい抑えられんのか・・・」」


最後にそれを口にした二人は、それでも笑いながら自宮へと帰って行った。