何があっても護りたいもの。
その為に信じることは大事…
久しぶりに起き上がれた。
窓の外はもう春になっている。
「気持ちいいわ。」
はそう言いながらベッドから半身を起こした。
コンコン
「はい。」
ゆっくりと扉が開かれる。
「、身体はいいのかい?」
目の前にはの想い人が立っていた。
「アフロディーテ様…」
片手にバラの花束を持ち、笑顔を見せる彼。
「起きても平気?」
「ええ、今日は凄く気分がいいみたいです。」
そう言って、微笑む。
「無理をしないでくれ。貴女に何かあれば私は…」
「平気ですよ。アフロディーテ様、貴方こそ…ここに来ても大丈夫なんですか?」
ベッド脇の花瓶にバラを差し込むアフロディーテには言った。
「二人だけの時は…」
「ごめんなさい…アフロディーテ」
謝るに触れるだけのキスをする。
「いいんだよ。…私の愛しい人」
そう言ってまたキス。
アフロディーテはいつもそう。
普通に恥かしい言葉もサラリと言いのける。
最初は赤くなっていたも、今ではその言葉が素直に嬉しく思う。
それは、アフロディーテが本音で言ってくれるのが分かるからである。
「こうして…束の間しか逢えなくて申し訳ないと思っているんだ。」
「いいの…束の間でも逢いに来てくれるから。」
はアフロディーテの手に触れる。
「しかし…」
「アフロディーテこそ…約束したでしょ?」
その言葉にアフロディーテは苦笑いした。
「そう…だった。そうだ、。気分がいいなら…」
「えっ?…きゃっ」
アフロディーテはを抱きかかえる。
「えっ…ちょっと…アフロディーテ!?」
「私の自慢のバラを見えてあげよう。」
アフロディーテはにそう言うと、が冷えないように上着を着せた。
「あの…アフロディーテ?」
は周りに聞こえないような小声で言う。
「何だい?」
「私…歩けるわ」
の双魚宮に仕える者達がにこやかに二人を見ている。
微笑ましい光景だと。
しかし、当のはやはり恥かしいと思っているのだ。
「イヤなのかい?」
耳元でそう言われる。
愛する人に抱かれているのに嫌な訳がない。
「…いいえ。」
「ならばこのまま参りましょう、我が姫。」
周りにいる人にも聞こえるように、はっきりと言う。
その言葉にまた顔を赤くする。
アフロディーテはそんなを見てクスリと笑った。
「…綺麗」
アフロディーテに連れて来られたは一面のバラに歓喜の声を上げた。
「私の自慢のバラだ。…貴女に見せたくて」
アフロディーテは歓喜の声を上げているを後ろからそっと抱きしめた。
「…アフロディーテ?」
の首元に顔を埋めているアフロディーテの様子が少しおかしいと思った。
「…どうしたの?ねぇ…アフロディーテ?」
「私は…私は…自分に自信がない。」
アフロディーテの身体が少し震えている。
「・・・・・」
「アテナの為に…世界の平和のために戦う事が。でも、貴女を独り残してこれから戦う自信が。」
「…私は独りじゃないわ。」
そう言って身体を反転させ、アフロディーテの身体を抱きしめる。
「貴方が私を想ってくれている。私はいつも貴方を感じてるもの」
の瞳を見つめていると、心から愛されているのが分かった。
「…」
「だから、自信を持つの。」
そう言って微笑む。
「私は…なんと幸せ者なのか。」
を抱きしめる腕に自然と力がこもる。
「アフロディーテ?」
「…貴女にこれ程愛されている私は…世界一の幸せ者だ。」
その瞳は真っ直ぐにを見つめている。
ゆっくりと近づくアフロディーテの瞳。
はその瞳の中に自分しか映っていない事が嬉しかった。
いつもより長いキス。
「…愛しているわ。」
「…私も。、貴女だけを愛しているよ。」
そうして二人で微笑む。
「なかなか逢えないけれど…時間を作るから」
「待ってる。貴方しか愛せないもの」
のその言葉にアフロディーテは頷く。
バラの花びらが舞う中で、二人は微笑む。
そして…
「…今帰ったよ。」
「おかえりなさい、あなた。」
3週間振りにアフロディーテが任務から帰って来た。
「体調は…いいのか?あまり良くないと聞いて急いで帰ってきたけど…」
「ええ…貴方が無事に帰って来てくれたから。」
そう言うを抱きしめキスをする。
と、部屋の隅から小さな泣き声が聞こえる。
「あら…あなたが帰ってきたのが分かったのかしら?」
アフロディーテは笑いながら泣き声の元へと向かう。
「ただいま…私達の愛の結晶」
そう言って抱きかかえる。
小さなその手がアフロディーテの頬を触る。
「きゃきゃきゃ」
小さな命は、その温もりを喜ぶ。
「…私は幸せ者だ。貴女とこの子がいるから戦える。」
「貴方とこの子がいるから…私も寂しくないわ。」
は微笑むとアフロディーテからその子を受け取る。
「早く大きくなって…そしてパパのように強く優しくなるのよ。」
「私はママのように心強い、純粋な子に育って欲しい。」
『愛している』
二人の声が重なる。
小さな子に、そしてお互いに囁く。
いつか、あなたが大きくなった時に話してあげる。
パパとママが信じたモノを…