手を伸ばして触れた貴女の頬は
まるで氷のような冷たさを持っていた・・・
二度と触れる事が出来ないその温もりに
私はただ瞳を閉じて思い出す・・・
少し寂しげに微笑む貴女をこの腕に引き寄せ・・・
細くなったその躯を強く抱きしめてキスをした
たったそれだけでよかった・・・
たったそれだけの事かもしれないが・・・・
私にとって、それは幸せそのものだった。
Season of prayer 〜ただ想いが降り積もるだけ・・・〜
ゆっくりと目を開けてみる。
自分の隣で静かに寝息を立てている貴女に触れ、
その上下する胸にそっと顔を近付ける。
生きている
それを感じる事が出来た私は少し安心した。
先ほど夢が頭を過ぎる。
そう遠くない未来に来る事実。
「・・・ん・・・」
「・・・」
「・・・カミュ・・・?・・・どうかしたの?」
そっと開かれた瞼から覗く淡い紫の瞳に私が映る。
それだけで胸が熱くなる。
これほど私はの事を想っているのかと自覚しつつも、
この温もりを離したくないと自らの腕に力を込め、を抱きしめた。
「どう・・・したの?」
そっと私の髪を撫でながら、が優しく声をかける。
私はの胸に顔を埋めたまま、何でもないと小さく答えた。
何でもないはずがない・・・
もうすぐ彼女はここからいなくなってしまう・・・・
同じ時を過ごす事が出来なくなってしまう・・・
それを想うだけで何も出来ない自分が歯痒い・・・
「カミュ?」
「・・・・・・少し・・・・このままでいさせてくれないか・・・・」
を抱きしめる腕に力を込める。
彼女が苦しくない程度に・・・・
そんな私をは何も言わずにそっと抱きしめ返してくれた。
「このまま時間が止まってしまえばいいのにね・・・・」
「・・・・そうだな」
「そうすればずっとカミュといられるのにね・・・・」
「・・・・そうだな」
「ずっとカミュとこうして過ごしていけるのにね・・・」
「・・・・そうだな」
彼女の言葉に同じ事しか返せない
何を口にすればいいのか分からない・・・
「・・・ごめんね、カミュ」
「・・・・・・・」
「・・・ごめ・・・な・・・・」
ポタリと私の腕に落ちる暖かな雫。
ゆっくりと顔を上げると、優しい微笑みと真珠のような涙が見えた。
私はの頬に手を添えると、額、頬と順にキスをする。
そして最後にその唇にそっとキスをした。
「カミュ・・・・」
「を愛している・・・・誰よりも・・・ずっと・・・」
「嬉しい」
そう言うとゆっくりと瞳を閉じる。
「?」
「ん?」
「今夜はこうして眠ってもいいだろうか?」
「うん・・・カミュ」
私はの胸に顔を埋め、ベッドに横になる。
「愛してるわ、カミュ・・・愛してる・・・・愛してる・・・・」
はずっと私の髪を撫でながらそう耳元で囁いていてくれた。
それからどれだけ時が流れただろう・・・
もう戻れないあの日に・・・・
私は今も胸が張り裂けそうになっている。
ただ・・・過ぎ去っていく時の流れが残酷過ぎて・・・・
それでも私は忘れる事など出来ない
誰よりも・・・を愛しているから・・・
あの微笑みと温もりは・・・
今もこの胸の中で行き続けている・・・・
====あとがき====
リハビリ作品です。
久しぶりなので本当にショートストーリーになってしまいました。
リハビリがてら、このお題で幾つか作ってみようと思います。