貴女が流す涙はとても澄んでいて美しかった

その涙の理由を聴きたくて・・・
その悲しみを少しでも分かち合いたくて・・・

だから考えてしまう・・・・




【君のためにできること】




「・・・・・・・・・・・・っ!」

それは幻想的な光景に思えた。
黄昏時に浜辺に佇む人影。
腰に届きそうな綺麗な栗色の髪を風に靡かせ、
ヒラヒラと舞う青緑のスカートは昔アテナから聞いた天女の羽衣のように
目に入ってきた。

カサッ


「っ!?だっ・・・誰!?」

怯えたような顔で振り向いた彼女。
その姿に一瞬釘付けになった。

秀麗な顔
色白の肌に鮮やかに映える赤の唇。
蒼い瞳から流れるその真珠の様な涙。

その姿に男はその場から動けなくなっていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・誰?」

彼女がゆっくりともう一度問う。
男ははっとしたように苦笑を浮かべつつ答えた。

「私は・・・・カミュだ・・・」

「カミュ?」

「そうだ・・・・・・・・君の名を聞きたい」

男・・・カミュはそう言って一歩ずつ近寄っていった。

「私の名前・・・・・・」

そう言って胸元に手を当てる。
カミュはの向かいまで来るとその頬にそっと手を当てる。
一瞬、の身体がびくっと震える。

「貴女の涙は美しいな・・・・」

「えっ・・・・あっ!!」

カミュの言葉が終わると同時にその目じりに温かな感触を覚える。

「・・・だが、それ以上に貴女にはきっと笑顔が似合うのだろうな・・・」

そう言って微笑むカミュに、はぼーっとただカミュを見つめた。
がハッとしてその頬を紅く染める。
その様子にカミュはくすっと笑うとその身体をそっと抱きしめた。

「・・・・・・貴女の笑顔が見たい・・・・」














「ああいうのを一目惚れというのだな・・・」

宝瓶宮の私室でゆっくりとくつろぐカミュの膝の上に頭を乗せ、
まっすぐな瞳でカミュを見つめるにそう呟く。
はくすっと微笑んだ。

「そうなの?」

「ああ・・・・あの時、私はの涙があまりにも綺麗で・・・
その姿に魅入られていたのだ。」

すっとの髪を梳きながらカミュは答える。
少しくすぐったそうに身を捩りながらも、は起き上がりカミュの頬に手を添えた。
カミュはくすっと微笑むと、の頬に自分の手を重ねる。
そしてゆっくりと顔を近付けていった。

「///////////」

「いい加減、顔を紅くするのはやめないか?」

「だっ・・・だって・・・」

「まぁ、のそういう顔も愛しているがな・・・」

「カっカミュ!!」

「くすくすくす」

そう笑うカミュには少し不貞腐れた顔をする。
カミュと一緒になっては笑顔を絶やさなくなった。
あれから・・・カミュと出逢った日以来、一度も涙を見せては居ない。

「ねぇ・・・聞いていい?」

「ん?」

「私、このままカミュの傍にいていいのかな?」

「何を突然言い出すのだ?」

「・・・カミュは私にアレコレ言わないでしょう?」

「無理にさせようとは思わないからな・・・それにには自由が似合っている」

「・・・最近想うの。カミュのおかげで私は笑っていられるの・・・
だから何かカミュのために出来ること、してあげたいんだ」

そう言ってカミュに抱きつく
そんなをカミュはそっと抱き締め返した。

「私の為にできること?それは・・・」

抱き締める腕に力が篭る。
はカミュのその胸に顔を埋める。
微かに香るカミュの香水。
自分と同じ・・・甘い香り。

「それはが私の傍にいてくれることだ。
辛い時も悲しい時も、それを分かち合いたい。
決して一人で苦しませたくない。
だから傍に居てくれればそれでいいのだ。」

「カミュ・・・」

顔を上げると、カミュは柔らかい微笑みを浮かべていた。
そしてには優しいキスの雨が降る。

、本当に愛している・・・」

そう言ってカミュはすっと立ち上がり窓辺に向かう。
そして窓を開けると爽やかな初夏の風が部屋に入って来る。
窓辺に寄りかかり、カミュはしばらく外の景色を眺めていた。

ふと視線をに移す。
は多少まだ顔を紅くしてはいたが、テーブルの上にある
紅茶を飲んでくつろぎだしていた。

、私も聞きたいことがある。」

「??」

「考えたのだが・・・・・・」

そう言うとカミュはふわりと微笑んだ。

「結婚・・・しないか?」

「カ・・・ミュ・・・・?」

「ずっと考えていたのだ・・・・」

「カミュ・・・」

じわりと目尻が熱くなるのをは感じた。
自然と零れる涙。
そんなを見てカミュは苦笑したが、やはり微笑みはそのままだった。

「泣かせる気はなかったのだが・・・・
私はのために何ができるかと考えていた。」

そう言ってカミュは両手をに差し出す。

「・・・私と生きてくれないか?」

「カミュ!!!!!!」

その瞬間、カミュの胸に飛び込む
カミュはそんなを優しく抱きとめた。

・・・これからも私の傍にいつも居て欲しい・・・
私はずっと傍にいるから・・・・」








貴女がが涙を見せる時も
貴女が悲しみに打ちひしがれる時も

ずっと傍で抱き締めてあげる
ずっと傍にいてその微笑みが消えないように・・・

永遠に愛し続けるから・・・・