その微笑みが道標・・・
いつも・・・いつでも・・・
君の為に生きてみせる・・・
【君が待っているから・・・】
「じゃあ行って来るよ・・・」
「ええ、行ってらっしゃい。」
宝瓶宮の入り口で愛しい人を見送る。
カミュはをきゅっと抱きしめてキスをする。
カミュは名残惜しそうにを離すと、マントを翻し宝瓶宮を後にした。
階段を降りる間もちょくちょく振り返る。
振り返った先にはが笑顔でカミュに手を振っていた。
「よっ・・・昨日はあつーい夜でも過ごしたか?」
上の宮に何か用があるのだろう。
階段を上ってくる親友の言葉に苦笑しつつ、カミュは風に靡く髪を後ろにやる。
「ミロ・・そんな事言っている暇があるのなら、
早く書類を出せ。またサガに異次元に飛ばされるぞ?」
「はははは・・・・勘弁して欲しいな・・・あれは参った。」
そう言いながらカミュの肩を叩く。
以前、溜まりに溜まっていた書類のせいで、サガがキレてしまい、
原因を作ったミロが異次元に飛ばされる事があった。
あの時はシャカとムウの協力の下、何とか無事に帰って来られたが・・・。
「いつまでの任務だ?」
「2週間、ま、シュラと一緒だから問題はないとは思うが・・・」
「水と氷の魔術師が気を抜くとは思わんが、一応気をつけろ。」
「ああ。」
そう言うと、カミュは片手を挙げて挨拶をし、
シュラの元へと向かった。
「おいっ、!?」
「・・・・・・あっ、ミロ。」
宝瓶宮の入り口で壁に寄りかかるように座っていたに、
ミロは声をかけた。
見上げた顔は相変わらず綺麗なものだったが、
首筋から流れる汗にすぐ気付き、額に手をやる。
「????」
「お前、どっか悪いのか?」
「うん?」
「顔色が少し悪い。」
そう言って額に手を当てるミロ。
じわりと暖かいものがの中に流れ込んできた。
「あったかい・・・」
「・・・・・・よし。少しはマシになっただろう?」
そう言ってにこっと笑うミロにはありがとうと笑顔で返した。
「でも本当に大丈夫か?」
「うん、病気じゃないから。」
「???????」
頭にたくさんの?マークを浮かべるミロには苦笑した。
そして・・・
「そう言えば、サガが探していたよ?・・・なんか機嫌悪そうだったけど・・・」
「ゲッ!!!わっ・・・悪い、。あんま無理しないようにな!!!」
そう言うと慌てふためいてミロは教皇の間に走って行った。
そんな後姿をはクスクスと笑いながら見送り、
宝瓶宮の奥へと戻っていった。
「おい、カミュ。」
「何だ、シュラ。」
「大丈夫か?」
「何がだ?」
「。」
カミュはじっとシュラを見る。
シュラはくくくっと笑い、目の前の雑魚をエクスカリバーで叩き切っていく。
シュラを睨む事を忘れずに、敵をその凍気で倒していくことに抜かりは無い。
「が何だというのだ?」
「お前、気付いてないのか?」
「?」
「・・・・・・駄目だ・・・・・」
「だからシュラ、何だと言うのだ・・・・」
「そうだな・・・まっ、お前も隅には置けんということだ。」
一頻り敵を倒した後、シュラとカミュは宿へと戻る。
同室で、シュラは片手にブランデーを持ち、くくくっと笑った。
「もう少しだな。あと3日か。」
「ああ、思った以上に簡単に終わりそうだな。」
「ああ。」
カミュはカランと音を立てて氷が割れるグラスを傾けた。
「で?隅には置けんと言っていた事だが・・・」
「あぁ、その事か。直接本人に聞くんだな。」
「・・・・」
「その方が信憑性が高い。」
「・・・・・・・・」
じっとグラスに視線を落としたままのカミュの姿を
珍しいものを見たとシュラは笑っていた。
「はぁ・・・今日か・・・」
「なんだ?そのように浮かない顔をして。」
「あっ・・・シオン様。」
「今日はカミュとシュラが帰ってくる日であろう?
もう少し喜べんのか?」
「喜びたいのはヤマヤマなんですけどね・・・・」
シオンの視線を感じ、ふっと顔を上げる。
シオンの視線の先は・・・・
「何ですか?シオン。人のお腹ばっかり見て・・・・」
「ふむ・・・・・・・4ヶ月というところか・・・・」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
がちっと固まり、声にならない声を発しているを他所に、
シオンは顎に手を添えて言う。
「何だ・・・そこまで驚くことはないだろう。」
「え・・・・あ・・・・はぁっ????」
「普段のとはまた違うものを感じてな。・・・・何と説明すればよいか分からんが・・・
二つの小宇宙をお前から感じたのだ。」
しみじみと言うシオンを横目に、は「はぁ〜」っと盛大なため息をついた。
「・・・貴方には敵いませんね。」
「カミュは知っているのか?」
「いいえ、でも帰ってきたら言おうと思って・・・でもいざ言おうと思うと
凄く緊張してしまって・・・・」
そんなの頭をシオンはポンポンと子供をあやすかの様に軽く叩くと、
にっこりと微笑んだ。
「目の前にカミュがおれば、そんな悩みもなくなるだろう・・・
さて・・・後はゆっくりと話すがいい。」
「えっ!?」
そういい終わると同時にシオンが振り返る。
そこには・・・
「カミュ!?」
「ああ、ただいま、。」
にこやかに、そして愛おしそうにを見つめるカミュ。
は思わずカミュに飛びついた。
「おかえり!!」
「ただいま。」
「怪我は?ないよね??」
「ああ。」
「あのね!!カミュに言わなきゃいけないことがあるの!」
抱き締められる腕の中で、は思い切って話を切り出す・・・が。
「その前に一つ聞きたい。」
「??何でしょう・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・何故、お前から2つの気を感じるのだ?」
「えっ・・・」
「気付いなかった私も私だが・・・」
じっと心配そうにを見つめるカミュ。
は意を決してカミュに伝えた。
「あっ・・あのね!!・・・・・かもしれないの・・・。」
「最後が聞こえなかったが・・・」
「だから・・・・・」
「だから???」
「・・・・・赤ちゃん!!!!」
その瞬間、の視界が一気に高くなった。
「えええええ!?」
「本当か!?」
そう・・・
カミュがを抱き上げていたのだ。
「ちょちょちょちょ!!!!」
「ああ、すまない。私としたことが・・・・
大切な身体だからな・・・」
「うん・・・・」
「これで心置きなく結婚式が出来るな・・・」
「うん・・・・って!?」
「プロポーズはしたし、OKも貰った。
後は式だけだっただろう?」
そう言って不適に微笑むカミュに、は一瞬唖然としていたが、
すぐに天使のような微笑みでカミュを見つめた。
「うん!!!」
「ここに・・・いるんだな・・・私達の想いが・・・」
そう言って優しくの腹部に触れる。
「そうだよ?ここにいるの・・・小さいけれど一生懸命に生きようとする命が。」
「愛している・・・も・・・その子供も・・・・」
「私もだよ。カミュを愛している。そしてこの子も・・・・」
「忘れてないか?」
その声にカミュとははっとする。
シオンは苦笑しながら二人を見た。
カミュは冷静な表情を変えずにシオンの前に行くと、
すっと膝をつく。
「教皇・・・という事ですので、しばらく休暇を頂きたい。
それから・・・・・」
「ああ、分かっている。アテナには私から伝えておこう。
・・・」
「あっ・・・はい!」
「よい子をな。頑張るんだぞ?」
「・・・・はい!!!」
「こうして思い出してみると・・・私もクールではなかったな。」
「ふふふ・・・」
「あの時は本当にが大切だったからな・・・」
二人でソファに座り、目の前に飾られてある写真に目をやる。
結婚式の写真がいくつも飾られていた。
「ねぇ、カミュ。」
「ん?」
「今でもあの時と変わらない?」
「ああ、そうだな。今も・・・いやあの時以上にが大事だ。
・・・・・・・そして・・・・」
そしてふっとカミュは視線をの膝の上にやる。
そこにはすやすやと寝息を立てて眠る小さな命があった。
「そしてこの子も大事だ。私はいつでもこの場所に帰る。」
「そうね・・・・貴方がいる場所が私の帰る場所だから・・・」
「私にとっても同じだ。・・・君が待っているから」
愛しい君が待っているから・・・