・・・もう昼近くだぞ?」

「ぅ・・・ん・・・」

「こら・・・いつまで寝てるんだ?」

「・・・カ・・・ミュ、今日・・・は執務?」

宝瓶宮、カミュの寝室ではシーツに包まりながらカミュを見た。
カミュはふっと微笑み、首を横に振る。

「いや、今日は休みだ。」

するとはさらにシーツに包まりだした。
そんなにカミュは苦笑すると、ぎしりと音を立ててベッドに座る。

、せっかくの休日なのに寝るのか?」

カミュはの髪を梳きながら言う。
はくすぐったそうに身をよじるが、ふいに感じた束縛に瞳を開ける。
それはカミュがの身体をシーツごと抱きしめていたからだった。

「んぅ・・・カミュ!苦しいよ〜。」

「言うことを聞かないが悪いのだ。」

「だって〜眠いんだもん・・・」

カミュは腕の中のに優しく微笑みながらその唇にキスをする。

「私は早く起きて欲しいのだがな・・・。」

「何で??」

少し上目遣いでカミュを見るに、カミュは胸の高まりを感じていた。
自分が最も愛しく思う女性が、そんな瞳で見つめてはさすがにカミュの中の
男が刺激されて当然である。
カミュは自嘲気味に笑うと、の首元に顔を埋める。

「カっ・・・カミュ、くすぐったいよ。」

、私も男なのだぞ?
そんな可愛い顔で見つめられればまたお前を抱きたくなる。」

カミュは不適な笑みを浮かべ、じっとを見つめた。

「・・・・・・そう言って昨日も・・・・・・」

ほんのり頬を紅く染め、カミュの首に腕を回す。
カミュはそのままを抱き起こすと、そっと額にキスをした。

「さて・・・起きる気になったか?姫君?」

「もう少し寝てたかったけど・・・」

そう言うに微笑みながらカミュは腕を離した。

「・・・いつもはゆっくり寝ててもいいって言ってくれるのに・・・
何で今日は起こしたがるの???」

「今日だからだ。・・・では、私が何故休みを取っていると思うのだ?」

そう言われては小首をかしげた。
カミュ達の休みは3日に一回。
よくよく考えると昨日もカミュは休みだった。

「あれ?言われてみればそうかも。昨日も休みだったよね?」

「ああ。」

「じゃあ何で???今日は何かあるんだっけ???」

の言葉にカミュはふぅっとため息をつき、己の額に手を当てる。

「・・・・・・、今日は何の日か分かっていないのか?」

「ほえ??」

「・・・・・・・・・、今日はお前の誕生日だろう?」

「ああっ!!」

「・・・・・・まさかとは思うが忘れていたというオチはないだろうな・・」

「・・・・・・忘れてました。」

はぁっとため息をつき、カミュはクローゼットからの服を取ってやる。
は手渡された服をマジマジと見た。

「??ドドドドドドレスぅぅ!?」

カミュから手渡されたドレスはカミュの髪に合わせたような真紅のドレス。
ふわりとしたイブニングドレスだった。

「今日くらい着飾ってもいいのではないか?」

「すみませんねーーっ!いつもGパンとシャツで!!」

「そうだな、いい加減私のシャツを着るのもやめて欲しいものだ。」

そう言って面白そうに笑うカミュに、はぷぅっと頬を膨らませる。
が・・・

「さて、着付けでもしてやるか。」

「えっ・・・ええっ!ってカミュっ!!ちょっ・・・」

の抵抗も虚しく、カミュにちゃっちゃと服を着替えさせられ、
手を引かれてリビングに連れて行かれた。
リビングのテーブルの上には暖かいお湯が張られたバットと、
その周りには色とりどりのマニュキュアが用意されていた。

「さて、次は指の手入れだ。そのドレスに合い、に一番似合いそうな色は・・・」

そう言いながら、カミュはマニュキュアの色を選ぶ。
薄い桜色を選ぶと、の手をお湯に浸けた。
そして、手際よく指の手入れをしマニュキュアを丁寧に塗っていく。

「・・・・・・・・・さぁ、出来た。」

「うわ・・・・・・綺麗。」

「だろう?、お前は磨けばこんなにも綺麗なのだ。」

「磨けばね・・・」

「私は宝石の原石を手に入れたようだな・・・いや、もう原石ではないが・・・」

の指先にキスをすると、にこりと笑う。
普段はクールだの冷たいだの色々と言われているカミュだったが、
の前では違う。
優しく微笑み、情熱的な面を常に出す。
フランスの人っていつもこうなの?と思ったりもするが、
聖衣を纏っているカミュはそんな面を微塵も見せない。
逆にそれはにとって喜ばしいことだった。

「さて、綺麗に着飾りもしたし、食事にでもするか?」

「うん!!」

カミュはテーブルの上に次々と料理を運んできた。

「すご・・・これ、全部カミュが作ったの?」

「そうだ。の為にな。さて、お口に合えばいいのだがな。」

テーブルの上に並べられた料理はもちろんフレンチ。
高級料理店にでも足を運んだかのように並べられた皿には驚くが、
その料理に手をつけてさらに驚く。

「おいしーー!!カミュって料理上手いんだね!!」

「喜んでもらえて何よりだ。・・・料理は逃げないのだからゆっくり食べろよ。」

並べられた料理をほとんど食べ終わると、カミュはそっと席を立ちキッチンに向かった。
しばらくしてカミュが戻ってくると、手にはチョコレートケーキがあった。

「これも??」

「ああ。ケーキなど初めて作ったが・・・」

テーブルに置かれたケーキの上にはたくさんのフルーツが乗っていた。
そのフルーツは全てが好きなもの。
はカミュに切り分けられたケーキを口に運ぶ。

「おいしいよっ、カミュ!」

「それはよかった。」

しばらく談笑した後、ソファに座るカミュと
はふとカミュを見る。


―カミュって本当にクールなのか分かんないや。
でも・・・どんなカミュも私好きなんだな・・・



「カミュ・・・あの・・・ありがと・・・ね。」

?」

「誕生日祝ってくれて・・・。」

がカミュにぺこりと頭を下げる。
カミュはそっとを抱きしめ、耳元で囁いた。

「礼を言うのはこちらの方だ。、生まれてきてくれてありがとう。」

「カミュ・・・」

「私はお前という存在が生まれてきたことに感謝している。
もちろん、が私を選んで傍にいてくれていることも。」

「うん・・・私も・・・カミュが私を選んでくれたことが嬉しいよ。」

はカミュを抱きしめ返し、ふわりと微笑んだ。
それに応えるかのようにカミュも微笑む。
そして額、頬と順にキスをし、最後に唇にそっと触れるだけのキスをした。

、愛している。」

「私もカミュを愛してるよ。」

「これからもずっと私の傍にいて欲しい。」




君が生まれてきてくれたことに感謝しよう。
君がいるからこそ、私は幸せを感じることが出来るのだから。

・・・生まれてきてくれてありがとう。