何もない空間。
音もなく・・・自分が存在しているかも不安になるその空間。
そこにカミュはいた。
「・・・どこだ・・・・・・・・」
―モウ・・・ダレモ・・・・コナイデ・・・―
「!?・・・くぁっ!!!!」
カミュの全身に痛みが走る。
それはの意思だった。
外界からの接触を避けるために・・・
カミュの身体の回りにいくつもの光る球が当たる。
「っく!!・・・・仕方ない・・・・か・・・・はぁぁぁ・・・!!!!」
カミュがその球体を身体から離す為、小宇宙を高める。
が、次の瞬間、シャカの言葉を思い出す。
『何があっても攻撃してはならない。
今から君が行くところ全てがなのだ。』
「くっ!うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
バリバリバリと全身に衝撃が走る。
しかし、カミュはその激痛に耐えるしかなかった。
ここで攻撃をしてしまえば、の精神に直接傷をつけてしまう。
「・・・私だ!!カミュだ!!!!!
どこにいる!!ーーーーー!!」
必死に叫ぶも、カミュにはの姿を見つけることが出来ない。
それでもカミュはの名を呼び続ける。
「!!!!!!」
痛みがさらに増し、カミュの意識が少しづつ薄らいでくる。
『もう・・・意識・・・が・・・!?・・・何だ?・・・あの光は・・・』
駄目だと想った瞬間見つけた光。
それは淡い蒼い光だった。
カミュは力を振り絞ってその光に近付いていった。
その光にそっと手を触れて見ると、
それはほんのり暖かった。
「これは・・・うっ!!」
カミュの頭に浮かぶ光景。
それはとカミュが微笑んでいた。
『カミュったら・・・あっ、でも氷河君も強くなったよね?』
『そうだな・・・氷河もアイザックも私にとってかけがえのない弟子だ。』
『大切な人だね。カミュにとって大切なものは私にとっても大切だよ。』
『そうか・・・それは嬉しいな。だが・・・』
『何?』
『私が一番大事なのは、お前だ。』
『カミュ』
『離しはしない。ずっと私の傍にいてくれ。』
『もちろんだよ!!カミュ、大好き!!』
「・・・そうだ・・・私はこんなにもを想っていた。
・・・・あちらにも同じようなものが・・・・」
カミュは所々にある同じような光に触れていく。
不思議と全身に走る痛みも光に触れている時は感じなくなっていった。
『カミュ、私ねずっとカミュの傍にいるよ』
『どうした?急に・・・』
『ん?ふと想ったの。
カミュは聖闘士だからいつ死ぬかわからないでしょ?』
『そう・・・だな・・・』
『だから、それまでずっと傍にいる。
あっだからってすぐ死んじゃ駄目だよ?』
『はは、私はそんなに弱くないさ。』
『そうだよね!!黄金聖闘士だもん。』
『ああ、私はそう簡単に死なない。さ、おいで・・・』
『うん!!』
「分かっていたのにな・・・私は・・・・は・・・」
私は・・・その強さに惹かれたんだ。
何があっても前に進もうとする強い意志に・・・
ひたむきに前を見て、希望を棄てない・・・
そんなお前に私は幾度となく助けられたのだ。
・・・・
「・・・どこだ・・・ーーー!!」
―・・・カ・・・・・・ミュ・・・・・・??―
僅かに聞こえた声。
その声がする方を探すカミュ。
「そうだ!!カミュだ!!!!!どこにいる!!!」
―ゴメン・・・ナサイ・・・ワタシ・・・ノセ・・・イデ―
「何を!!私が悪いのだ。私が弱いばかりに・・・
お前を傷付けた!!追い込んでしまった!!!」
―チガ・・・ウ―
「何が違うんだ!!」
―ヨワイ・・・ノハワ・・・タシ・・・ワタシノ・・・
ヨワサガ・・・ミンナヲ・・・キズ・・・・ツケタノ―
「違う!!!!頼むから姿を見せてくれ!!!」
―・・・カ・・・・・・ミュ・・・―
ぽぅっと先程より蒼い光が浮かび上がる。
その光の中に、一糸纏わぬ姿で、
まるで赤子のように身体を丸くしたがいた。
「シャカ・・・あれから随分時間が経ちますが・・・」
ミーノスがシャカに聞く。
シャカは表情を変えずにミーノスに答えた。
「そうだな・・・・だが、我々は何も出来ない。
カミュが上手くやる事を待つしかないのだ。」
「・・・・・・カミュか・・・・私はを妻にする資格などないようですね。」
ミーノスの言葉にシャカは何も答えず
ただ黙ってカミュの身体を支えている。
とそこへ、ムウが紅茶を入れてやってきた。
「・・・何も出来ないのなら一息つくのもいいでしょう。
・・・ミーノス、貴方もいかがです?」
にこりと笑い、ミーノスにティーカップを渡す。
ミーノスは頂こうと言い、そのカップを受け取った。
「・・・・・・!?」
突然、シャカが目を開く。
その行動にムウが驚き、
「どうしましたか!?」
と尋ねる。
「・・・カミュはどうやらを見つけたようだな・・・」
とカミュとを見て答えた。
「・・・貴方には負けましたよ・・・カミュ」
ミーノスは小さく呟き、瞳を閉じた。
「・・・・・・・」
すっと手を伸ばそうとしても、その光によって触れる事は叶わず、
カミュはそれでもに近付こうとする。
は身体を丸めたまま、口を開いた。
「カミュ・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい。私がいけないの・・・
私がちゃんと貴方への想いを断ち切れなかったから・・・
だから・・・」
「違う!!私が弱いばかりに、お前を傷つけ・・・
だからお前は何も悪くないのだ!!」
カミュは必死に叫んだ。
普段のカミュからは想像出来ないほどの勢いで。
の瞳がゆっくりと開かれ、カミュを見る。
その瞳は、澄んだ青空のようだった。
「カミュ・・・私は・・・」
「何も心配することはない、。・・・そこから出ておいで・・・」
カミュが両手を広げ微笑む。
その姿に、の瞳からは大粒の涙が流れる。
「私・・・私・・・・」
「・・・・お前を愛してる。」
「カ・・・ミュ・・・・」
「信じてくれ・・・・を愛してる・・・」
「カミュ!!!!!!」
パリィィィン
音を立てて光の球が弾ける。
その姿はまるで天使の産まれる瞬間を見ているようだと
カミュは思った。
そして、次の瞬間、カミュは愛しい存在を腕の中で感じていた。
「忘れないで欲しい・・・・いつでもを愛しているという事を・・・・
何があっても・・・・お前だけを・・・・」
「・・・うっ」
少し低い呻き声と共に、カミュの瞳が開かれる。
「カミュ!」
ミーノスがカミュに駆け寄る。
カミュはミーノスの姿を見て、ふっと笑う。
次にシャカやムウを見て頷いた。
「その様子だと見つける事が出来たようだな。」
「ああ、シャカ。」
4人がの方を見る。
はゆっくりと瞳を開いた。
「ああ、!!」
ミーノスが駆け寄り、そっとの手を握る。
「ミーノ・・・・ス様・・・・」
「すみません・・・・私のせいで・・・・貴女に辛い想いをさせてしまって。」
「いいえ・・・・私の・・・・方・・・・こそ・・・・」
はふわりと微笑み、首を振った。
「ミーノス、まだは疲れているようです。
もう少し、休ませて上げませんか?」
ムウの言葉にミーノスは頷き、そっとの手の甲にキスをした。
「私に出来るのはこれだけですが・・・・」
そう小さく呟きながら・・・・
数日後、の体調も戻り、結婚式が再度執り行われることになった。
あの時と同じ純白のドレスを纏い、はそっと外を見た。
カミュはどうしても外せない用事があるらしく、今日の式には参列出来ないと言っていた。
「。」
ふと背後からする声に、は振り返る。
「ミーノス様・・・・アイアコス様・・・・ラダマンティス様」
冥界三巨頭が並び、ふっと微笑んでいた。
「おおっ、やっぱ綺麗だよな〜は!!」
「アイアコス様ったら・・・」
「お世辞じゃねぇよ!!なっ、ラダマンティスもそう想うだろう??」
ラダマンティスはふんっと鼻で笑うと、踵を返して行く。
「くすくす・・・・私よりパンドラ様の方でしょう?アイアコス様。」
アイアコスは違いないと言ってラダマンティスを追った。
ミーノスはそっとに近寄り、ヴェールを取る。
「・・・・一度だけ許してくれますか?」
「えっ?・・・・・あっ////////」
ミーノスはそっとの頬にキスをした。
そして、を見てくすりと笑うとその手を引いて式場に向かった。
式場には、パンドラを始めとする冥界側の人間、ジュリアンを始めとする海界側、
そしてアテナを始めとする地上側のものが勢ぞろいしていた。
はミーノスに手を引かれ、神官役でもあるシオンの元へと連れて行く。
『・・・・カミュ・・・・』
ふと想うのはここにはいない黄金聖闘士の事。
は一瞬顔を曇らせたが、すぐに微笑む。
「・・・・。ここからは貴女一人でお行きなさい。」
「えっ?」
見上げるにミーノスはふっと微笑む。
なぜ、夫となるはずの男性がそんな事を言うのか分からない。
だが、周りを見れば、皆がニコニコと微笑んでいる。
は取り合えず、言われたとおりに進むことにした。
「貴女の幸せを・・・祈っていますよ。」
「えっ・・・・・!!!!!!!」
ミーノスが指を指した先、シオンの目の前に、
いるはずのない聖闘士がいた。
「カ・・・・ミュ・・・・?」
ふわっとマントを翻し、正装をした黄金聖闘士の姿。
は流れる涙を止めることが出来なかった。
「カミュ・・・・どうし・・・・」
「言ったろう?私は式に参列することは出来ないと・・・・」
そう言って微笑む。
は両手で顔を覆い、涙を流す。
そんなにカミュはそっと抱きしめ、ゆっくりとシオンの前に立つ。
「カミュ、お前はを妻とし、その命が尽きるまで愛することを誓うか?」
ゆっくりとシオンが言葉を紡ぐ。
「誓います。」
「、お前はカミュを夫とし、その命が尽きるまで愛することを誓うか?」
シオンの言葉にはこくりと頷く。
「誓い・・・・ます。」
まだ涙で上手く言葉が出せない。
でもしっかりとその言葉を言う。
「ではここに、二人が夫婦になることを認めよう。
異存のない者は彼らに盛大な祝福を!!!」
その瞬間、会場からは大きな拍手が響いた。
はカミュを見てまた涙を流す。
「、これからはずっと一緒だ。」
「うん!!」
交わされる誓いのキス。
その光景を、会場の端で見ていたミーノスは静かに踵を返した。
「・・・・貴女のその天使のような微笑みが永遠に続く事を祈っていますよ。」
その言葉は会場の拍手にかき消された。
ミーノスが立ち去るのを、視線の端で見ていたカミュは、
ミーノスに向かって小宇宙で話しかけた。
『ミーノス・・・・は責任を持って私が護る』
『当然です。・・・もし、の笑みを失わせたら・・・・今度こそ、
私がもらいに行きますからね。』
『ああ。』
『彼女の天使のような微笑み・・・決して失わせないでください。』
『分かっている。・・・・ありがとう、ミーノス』
ミーノスはふっと笑い、片手を挙げて、去っていった。
カミュは自分を見るに微笑み、そっと顔を耳元に近付ける。
「、貴女の微笑みはまるで天使だ。・・・私だけの・・・天使の微笑みを・・・・」
