仲間に嫉妬する程に君を愛している。
それをようやく認められそうだ。
「……、私は…」
宝瓶宮。
珍しく一人寝室にいるカミュ。
彼の恋人であるはどうやら違う所で眠っているようだ。
『カミュ!寒いからもっと近くに来てよ。』
『あったかいね、カミュは。』
そう言いながらいつも一緒に眠っていたのに。
「こんな時はどうしたらいいのだろうか。」
ポツリと呟き、額に手をやる。
自分のつまらない嫉妬心からを傷付けたのではないか。
自業自得というものだ。
そう思いながら、外は白んできていた。
PiPiPiPiPiPiPi…
アラームが鳴っている。
その音でカミュは自分が転寝をしていた事に気付いた。
確かに寝室にはいたがベッドに横になった記憶はない。
寝室のソファに座っていたはず。
「……このショールは…の?」
ふと自分の身体に蒼いショールが掛かってた。
これはが一番好きだと言っていつも使っていたもの。
「!」
カミュはそのショールを掴んで寝室を後にした。
「………。」
リビングにの姿はなかった。
が、テーブルの上にはきちんと食事が用意されていた。
「………。」
一人で椅子に座り、その朝食に手をつける。
出来たてらしくまだ温かい。
カタン
キッチンで音がする。
カミュは急いでキッチンに向かった。
「!…!?」
「悪かったね、じゃなくて。」
そこにいたのはアフロディーテだった。
「何でここにいるのかって顔してるね。」
そう言いながらローズティーを渡す。
「に頼まれてね。君にちゃんと朝食を食べさせてくれって。」
「……ありがたいとは思うが、はどこにいるのだ?」
ふぅっと一息つき、少し呆れ気味の顔でカミュを見る。
「全く、嫉妬なんて君らしくない。」
アフロディーテはくすっと笑う。
「私は別に嫉妬など。ただ、仲間と楽しそうに話すあれを見ていると…」
「心が苦しい。何故だか分からないがイライラする…じゃないかい?」
その通りだった。
親友のミロでさえ、と仲良く話をしているのを見ているのが嫌だった。
心の奥で苛立ちを隠せない。
「それが嫉妬というのさ。彼女はマイペースだから、君の想いもきちんと言わないと駄目だよ。」
他に取られても知らないとアフロディーテは言った。
「…ま、それだけ君がを愛している証拠でもあるけれど。
だってそうだろう?本当に好きでなければそこまでイラつかないものさ。」
「・・・はどこに?」
「ああ、そうだね。早く逢いに行った方がいい。彼女はサガの所だよ。」
それを聞き、礼もそこそこにカミュは双児宮へと向かった。
その後ろ姿を見てアフロディーテは
「恋はクールな男も熱くさせるもんだね」
と呟いていた。
双児宮ではがサガと話をしていた。
「サガ、私ね。カミュが怖い。」
サガが持っていたティーカップを落としそうな勢いでいた。
突然、に話があると言われたサガ。
いつもは明るい娘が悲痛な表情でいたから何事かと思い、
話を聞く事にしたのだが…
「怖いというのは?」
「…何だろう…冷たいって言うか…怖いの。」
は最近のカミュの事。
昨日の夜の事をサガに話した。
その話を全て聞き終えたサガは思わず喉の奥で笑ってしまった。
「くくっ…」
「サガ?」
「いや、すまない。カミュも嫉妬するものなのかと思うとつい…」
「しっ…と?」
ポカンとしているにサガは極上の笑みを浮かべる。
その笑みは世の中全ての女性を魅了するほど甘く、
カミュが一番と思っているも例外ではなかった。
思わず頬を赤らめてしまう。
そんなを見てサガはさらに微笑む。
「ああ、例えばこうして私と話をしているだけでもカミュは気に入らんのだろう。」
「どうして?」
「もっと言うならこうして…」
くいっとの顎を掴み己の顔の近くに持ってくる。
「サっ…サガ!?」
「私と口付けを交わそうものなら・・・」
ヒュゥ…
サガの唇がの唇と重なるか重ならないかの所で冷たい風が吹いてきた。
「………サガ、何をするつもりだ?」
風の吹いていた方向を見ると、冷気に包まれたカミュがじっとサガを見据えていた。
「カ…ミュ…」
「カミュか、私は特に何もしていないが?」
「……私のから離れてもらおうか。」
「分かった。分かったからその冷気を鎮めてはくれないか?ここが凍ってしまう。」
サガはカミュに笑いながらから離れた。
「…、話があるのだ。」
「……はい。」
はサガに軽く頭を下げ、カミュの後ろに付いていく。
カミュはサガに軽く視線を移し、テレパシーを送った。
『サガよ、次は容赦しないからな。』
『ふっ、ならばきちんと伝えてやるがいい。でなければ私がを貰うぞ。』
サガの言葉にさっきアフロディーテに言われた言葉を思い出す。
その言葉にふっと苦笑しながら、カミュとは宝瓶宮に戻ってきた。
「・・・昨日は私が悪かった。…話を聞いてくれるか?」
「うん…」
「私は、お前が他の者と話をしているのを見るだけで心が苦しい。」
カミュは胸の内を全て話していく。
「初めはこの感情が何なのか分からなかった。だが、それが嫉妬だと気付いた。
私は、を誰にも渡したくないのだ。閉じ込めてでも…私だけに微笑んでいて欲しいと…」
「カミュ…」
「愛しているのだ、だけを。どうしようもないくらい…」
「カミュ!!」
はカミュに力いっぱい抱きついた。
「よかった、嫌いになったわけじゃないんだね!」
「私が嫌うなど…むしろ私の方が嫌われて当然だと…」
「私、どんな時もカミュしか見てないよ?カミュしか愛せない!」
「…」
「カミュが嫉妬していたなんて知らなくて…ごめんね。」
「私の方こそ…」
二人の唇が自然と重なる。
「カミュ…」
「何だ?」
「昨日、何て言ったの?」
「ああ、何でもない。」
「もう、冷たくしないでね。」
「ああ、。愛しているよ。」
「私も、カミュを愛してるよ。」
そう言って微笑むが愛しくて、カミュはその腕の中にを閉じ込めた。
そのまま二人の影は重なる。
その夜。
「カ…ミュ・・・」
「、愛しているよ。愛している。」
自分の隣で安らかな寝息を立てているを見ながら、
カミュはそっとその頬にキスをした。
そしてふと昨日言った言葉を思い出す。
その言葉は…
『、お前は私のモノだ。』
この言葉をもう言う必要はないだろう?
お前は、確かに私の腕の中にいて、
私だけを見つめていると分かったから。