夢のようなひと時
そんな言葉は幸せを例える一つの言葉だと思ってた。
でもそれは・・・・現実だった。
「ねぇ、起きてよ」
その声で目が覚める事が私にとっては幸せでならなかった。
腕を伸ばせば、愛しい女性が側にいる。
「」
まだ目が覚めたばかりで少し掠れた私の声に
はふふっと微笑む。
「おはよう、カミュ」
そう言いながらそっと私の頬と額にキスをする。
そんなを私は強く抱きしめ、その唇に口付けた。
「おはよう、」
「おはよう」
何度も朝の挨拶を交わし、キスを交わす。
そんなゆったりとした時間を過ごすのが好きになったのは
彼女がいるからだと思った。
いつもは聖域で自宮にいて仕事をする。
時にはアテナの守護する大地を護る為に任務にも出る。
殺伐とした毎日の中に出逢えた一人の女性。
「ねぇ、そんなにくっつかなくてもどこにも行かないよ」
「嫌なのか?」
「そうじゃない・・・」
「ならばもう少しこのままでもいいだろう?」
そう言って今より強く抱きしめる。
そんな私を見て「困った人ね」と言いながらも
は優しく抱きしめ返してくれる。
私自身も驚いている。
こんな性格だったかと・・・
それはも同じ意見のようで・・・
だがといると心から落ち着ける。
彼女が私の腕の中で眠っているのを見るのが好きで・・・
時には彼女の腕の中で眠るのが好きになっていた。
「カミュ」
「ん?」
「好き?」
「ああ」
「どこが?」
「落ち着ける・・・と一緒にいると落ち着ける・・・」
そんな私の言葉が少し気に入らないのか
はちょっとムッとした表情になる。
だが口下手な私にはこれが精一杯の言葉なのだ。
「名前呼んでよ」
「」
「『愛してる』?」
「ああ」
「・・・・『愛してる』は?」
じっと私を見つめながら言うに
内心苦笑しながらもまた口付ける。
「愛してるよ」
「誰を?」
「を」
「で?」
彼女が何を言いたいのか分かっているが
どうしても言えない・・・
言えないと言うか・・・・恥ずかしい気もして・・・
それを知ってか知らずかは続ける
「誰を愛してるって?」
「・・・・・を愛してる」
その言葉を待っていたのかは微笑みながら私に抱きつく。
お互い多忙な身、だからそう毎日は逢えない。
それでもこうして逢っている時間だけは
誰にも邪魔されたくない。
例えアテナであっても、この一時だけは
邪魔されたくない。
彼女の親が私の事を頑なに拒んでいる事も知っている。
それは私の正体が知らない事もあるし、
彼女が嘘をついてまで私に逢ってくれていた事にもある。
彼女を責めるつもりなどない。
私に非があるからだと・・・
それでも抑える事が出来なかった。
彼女と過ごせる時間がわずかでもあるのなか
どんなに疲れていても逢った。
彼女と逢える・・・
それだけで力が出てくる
彼女と触れ合える・・・
それだけでどんな過酷な事でも出来る。
全ては彼女がいるから・・・
ここまで想った人など今までいなかった
自分が逢いたいからと・・・
彼女が嘘をついてでも逢ってくれるならと・・・
未だに彼女の親は反対している。
だけどこれだけはどうしても譲れなかった・・・
彼女と生きたい
彼女と共に歩いていきたい
そう想ったのはが初めてだったから・・・
「愛してるよ」
そう言って口付ける。
「もう一回」
甘えるを抱きしめながら答える。
「を愛してるよ」
「もう一回」
強請る様に私に抱きつくをもっと強く抱きしめながら答える。
「、愛してるよ」
「もっと」
「を愛してるよ」
そう言いながらの頬や額にキスをする。
「ねぇ・・・」
「ん?」
「大好きだよ」
「私もだ・・・だから・・・・」
「?」
「私の側にいてくれ・・・」
「うん・・・」
「愛している・・・」
を腕に抱きながら私はゆっくりと瞳を閉じた。
彼女の吐息を感じながらゆっくりと眠りにつく・・・
それが私にとって最高の幸せ・・・
この夢のような一時が永遠に続く事を祈りながら・・・