[ 共に生きて・・・逝きたいと想う・・・
それは他でもない貴方だからなの

どんなに苦しい事があっても
私は大丈夫だから

大切なモノ見失いがちな
今という刻を生きているけど

貴方だけは見失わないと
強く想うよ

その想いのままに強く

離れる事は貴方を想っているから
貴方が貴方の道を突き進む為に

だから貴方も見失わないで
貴方の一番大切なもの

それが例え私でなくても]











薄暗いバーで数人の客を前に弾き語る。
彼女―は静かに歌い終えると、すっとピアノの横に立ち
客に向かって一礼した。
オーロラのような海色のショールを纏い、黒いロングドレスを着こなしている。
歩くたびにさらりと揺れる赤黒の髪。

は客の間をすり抜けていった。

「いいな〜の歌は。」

「ああ、こうジーンと来るもんがある。」

口々に客は感想を言っていく。
はふわりと微笑み、「ありがとうございます」と答えた。

そのままカウンターの端に行き、マスターと向かい合う。

「ほらっ、これでいいのかい?」

マスターから差し出されたグラスを手に取り、

「ええ、ありがとう」

と言って口を付ける。

「お前さんもよくそんなもんストレートで飲めるね。」

「このくらい強くないと酔えないし」

そう答えながらもまた口を付ける。
が飲んでいるのはウォッカ。
ここ最近はこの酒をストレートでしか飲まない。

「どうしたんだい?最近、顔色がよくないみたいだが・・・」

「そんな事ないわ。」

「俺は長年ここでやっているから、薄暗くても分かるんだよ。」

そう言うマスターに、は肩をすくめた。

「・・・・・・・・・・・・・・何かあったのか?」

「何もないわ、それよりおかわりv」

はすでに空になったグラスを微笑みながらマスターに差し出す。
マスターは「あんまり飲みすぎはよくないぞ」と言いつつも、
一度言い出したら何を言っても聞かないの事を知っているので
黙ってウォッカを継ぎ足した。










「お疲れ様でした。」

「ああ、お疲れさん。また気が向いたら歌いに来てくれ。」

「ええ、それじゃ」

そう言ってバーを出る。
空を見上げると、夜明けまではまだまだ時間があるようだった。
はショールを掛けなおすとそのまま歩き出す。
しばらく歩くと誰かに腕を掴まれた。

「・・・だっ・・・れ!?」

「見つけたぞ、・・・・」

振り返るとそこには眉間に皺を寄せ、
三か月ほど前に見たきりの人物。
自分を心配そうに見つめる男。
蒼翠の髪を風に靡かせている男ーカミュの姿があった。

「・・・カミュ」

「・・・ああ・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・どこに行くつもりだ」

「答える必要って・・・・あるの?」

そう言うにカミュは小さなため息をつくと、
その身体を強引に抱き締めた。

「・・・・・・歌っていたのか?」

「ええ、マスターに頼まれたから・・・・」

「何故、出て行った?」

「・・・・・・・・」

「三か月、ずっと探していた。」

「・・・・・・・・・」

「何故・・・・」

「何をしに来たの?私は貴方から離れたのに?」

はその胸に顔を埋めながら尋ねる。
カミュは抱き締める腕に力を込める。

「・・・・、・・・・この三か月何をしていたんだ?
私は・・・お前のこととなるとクールにはなれない。」

「・・・・」

「可笑しいだろう?
散々、仕事だ修業だと言ってお前に構っていなかったのに。
だが・・・事実、お前が私のそばにいない時
今、誰といるのか、何をしているのか、私の事など、どうでもいいのか・・・
離れている間ずっと考えていた。」

ふっと顔を上げ微笑む
そんなにカミュは触れるだけのキスをし、
体を離すとの白く細い手を握った。。

「・・・・・・もう私の側からいなくなるな、。」

「・・・ぅ・・・カ・・・ミュ」

カミュの視線が鋭いものに変わっていく。
それは心配とかそういったものを超えて、
自分以外に関わりを持つ事を許さないといった
嫉妬を強く含んだ瞳だった。

「もう・・・これ以上抑えられない。これ以上は・・・」

口元に笑みを称えながら言うカミュだが
その瞳は鋭くなっていった。
その視線をは真正面から受ける。

「ぃ・・・っ・・・わ、分かったわ・・・カミュ」

カミュの手の力が強くなる。
それは痛いという感覚まで強まった。
その感覚が続いたまま、カミュに連れられて夜道を歩いた。








宝瓶宮に戻り、カミュはベッドに腰掛ける。
は飲んでいた強い酒の力もあり、
服もそのままに、横になるとすぐに寝息を立て深い眠りに就いた。
さらさらとの髪を撫でながら、カミュもまたの隣に寝転んだ。

「・・・・。何故、何も答えてくれないんだ?
私はお前だけを見ているのに、何故分かってくれない?
こんなにを想っているのに、何故いなくなったのだ?」

カミュは先刻の自分の姿を思い出し、苦笑した。
もう一人の・・・蒼い炎を宿した自分を抑えきれなくて・・・・
不甲斐ないな・・・・と瞳を閉じる。

だがそれでも私はを愛して止まない・・・


カミュはふっとため息をつきながらも、口元には笑みを浮かべていた。
安らかな寝息を立てるを精一杯優しく抱きしめる。

「おやすみ・・・」

自分の隣にある温もりに愛しさを感じつつ、
カミュはその瞳を閉じた。













まだ・・・真夜中・・・・・

「駄目だな・・・・私も・・・・」

低い声と共に、起き上がる影。
ふと隣に視線を移す。

「・・・・・・・・」

規則正しい寝息。
上下する肩。
少し肌蹴た服。

・・・目を開けろ・・・」

「う・・・・ん・・・・カ・・・・ミュ?」

まだ完全に醒めていない瞳でカミュを見る。
そこに映ったカミュの姿は先ほどのカミュと同じ。
尋常ではないオーラを纏ったカミュの姿だった。

「カ・・・ミュ・・・」

ゆっくりと顔を近づけ、耳元で囁いたカミュの言葉に
はぞくりとした感覚を得た。



「もう二度と逃がしはしない・・・永遠に私のものだ・・・



恋い焦がれた女を腕に抱くため・・・・
抑えきれない独占欲に支配されたもう一人のカミュが目覚めた。






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アンケートの黒&クールでいられないカミュを目標にしてみました。
駄作で申し訳ありません。