たった一人では生きてはいけない

そんな事、頭ではわかっていても、それでも何故か人を退けてしまう。

なのにそんな私に入り込んでくる貴方を憎めなくて

結局愛してしまったのは・・・貴方の罠





今夜もまた一人で窓から見える景色を眺める


ギィィィィ


っと重たい音を立てながら、その人物はの部屋に侵入してくる。


「何かしら?」


こんな夜更けにここを訪れるものはそういない。

はその人物に顔を向けることなく、言葉を紡いだ。


「・・・・もういいのではないか?」


低い声が部屋に木霊する。

月明かりに、その人物の深紅の髪が益々鮮明に輝き、また夜風に揺れていた。


「貴方も物好きな人ね、カミュ」

「貴女ほどではないと思うが・・・


そう言うと、一歩一歩へと近付いていく。

白いシャツにGパンとラフな格好のカミュは、そっとの傍まで来ると、

が見ている窓の隣へと凭れ掛かった。


、貴女は何故そうも人を拒む?」

「知ってるくせに」

「貴女の両親の事は知っている。だが世の中誰一人として一人で生きているものはいない。」


カミュの言葉にはくすりと笑う。

も気付いているのだ。

誰かに支えられ、誰かに愛され、誰かを愛して人は生きているのだと。

だが・・・


「そんな事は分かっているわ、でも・・・怖いの」

「怖い・・・」

「そう、人は一人では生きてはいな事など知っているけれど、誰かを愛するという事はその愛した人との別れもあるって事。」

「それが怖いのか?」


そう言うとカミュはすっとの髪をひと房手に取った。

そしてその髪にそっと口付をする。


「それはみな同じだ。だが、それでも人は誰かを愛することで無限の力を得る。そう思わないか?」

「そうかしら?」

「ああ、少なくとも、私はを愛しているからこそ、どんな困難も乗り越え、前に進めるのだが」

「こんな女を愛しても貴方に何の得があるのかしら?」

「損得の問題ではない。私がを愛する事に意味があるのだ。」


カミュはの身体を優しく、かつ力強く抱きしめた。


「私の傍で私の愛を受けてくれないか?」

「私、貴方を愛しているわ、だからこうして貴方にだけは逢っている」


はそう答えると、カミュの背に腕を回した。

月明かりの中、揺れる二人の髪

幻想的な雰囲気の中で見つめ合う二人は

そのままゆっくりと部屋を後にした。


新しい世界へと・・・