本当の強さを得る事が何なのか・・・
本当の強さは何なのか・・・
貴女に出逢って初めて知った気がする
少しの肌寒さは、
苛立ちを隠せない自分の感情を冷ましてくれる。
は一人で、聖域の近くにある丘の上にいた。
小さくため息をつくと、コロンと草の上に寝転び満天の星空を見上げた。
「どうした?眠れないのか?」
「誰っ!?」
「すまない、驚かせる気はなかったのだが・・・」
慌てて外していた仮面を付ける。
女聖闘士ではないだったが、どうしてか仮面を付ける。
その理由は誰も知らないが、聖域にが来た時にはすでに仮面を付けていた。
木陰から、すっと姿を現したのは、
紅い髪を靡かせながら、微笑んでいる黄金聖闘士だった。
「か・・・カミュ?」
「ああ・・・」
「ど、どうしてここに?」
「気が高ぶった日などは、よくここに来るのだ」
「そう・・・」
「隣・・・いいか?」
「え、あ・・・うん」
の言葉に、カミュはふっと笑って、隣に腰かけた。
そして、空を見上げる。
今日は月が出ていないせいか、いつもより多くの星座が見られた。
「眠れないのか?」
「うん・・・ちょっと・・・ね」
「そうか・・・・」
「カミュも眠れないの?」
「そうだな・・・似たようなものだ」
「?」
「こんな日は、星がよく見れるから、私はここにきて星を見るのだ」
そう言うカミュには同じように視線を空へと移す。
瞬く星が一層輝いて見える深夜。
ふと甘い香りがカミュの鼻腔をくすぐった。
「この・・・香りは?」
「あ、私の香水かな」
「香水なんか付けるのか?」
「夜だけね・・・執務があるし・・・」
「何と言う香水なんだ?」
「名前、知らないの。でもこの香りって付けた時と時間が経った後で香りが変わるのよ」
「いい・・・香りだな」
「気に入っているの。付けた時は強く香るけど、時間が経つにつれて優しく香るから」
「それはお前がそうありたいと思っているからか?」
カミュはそう言いながらを見た。
の表情すら分からないが、きっと笑っているのだろう。
手を口元に当てていた。
「私は・・・うん・・・そうかも知れない」
「そうか・・・」
「でもどうしたらいいのか分からないの・・・」
「私はそのままでいいと思うが?」
「そう・・・かな?」
「ああ。」
「私は・・・変わりたい」
「具体的にはどんな風に変わりたいのだ?」
「・・・・分からないけど・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
沈黙が辺りを包み込む。
しばらくして、口を開いたのはカミュだった。
「、誰しも何かになりたいと思うものだ」
「?」
「だが、その道は容易いものではない。」
「そうだよね」
「私とて同じだ」
「カミュ程の人が?」
「これでも泣いた時もあるし、挫けそうになった事もある・・・まぁ、幼い頃の話だがな」
「何か・・・信じられないんだけど」
「いや・・・本当だ。ただ、強くありたかった」
「強く?」
「ああ・・・大切な人を護りたい。こうと決めたらそれをただ貫いて行く。そんな強さがな」
「・・・カミュは・・・凄いね」
「凄くないさ・・・訓練をして、力を付け・・・そういう生き方しか出来ない不器用な男だ、私は」
そう言って苦笑するカミュに、はふふっと声に出して笑った。
そんなを、カミュは優しく見つめていたかと思うと
真剣な顔つきに変わり、仮面越しではあるが、の頬を撫でていた。
「、ずっと聞きたい事があったのだが・・・」
「・・・・・仮面の事?」
「・・・ああ。お前は聖闘士でもない・・・なのに何故仮面で顔を隠す?」
「・・・・・自信がない・・・からかな?」
「自信・・・?」
「皆を見て、笑う自信がないから・・・私・・・人の顔を見て話をして笑う事が苦手なの・・・」
「こうして私と話をしていて・・・笑っているのにか?」
「うん・・・・それに私きっと醜いから」
「それは・・・分からないのではないか?」
「え・・・あっ!!」
が手を伸ばした時には、仮面はカミュの手にあった。
「・・・・・・・・」
「かっ返して!」
「・・・・・・・だ」
「えっ!?何!?」
「・・・・思っていた通りだと・・・、貴女は醜くなどない」
「何をっ」
「・・・・知っているとは思うが・・・私はずっと貴女を見ていた。」
執務室で働いている時も、こうして毎晩のようにここにいる事も
ここに来れば、に逢える。
そう想ってカミュもまた毎晩ここに来ていたのだ。
本当は眠れないからではない・・・
に逢えるかもしれないという気持ちから来ていた。
「誰かの為に強くなりたいと・・・貴女と出会って初めて思った」
「カミュ」
「私は・・・貴女の為にもっと強くなりたと・・・だから私と共にいてくれないか?」
「私・・・」
「アテナが仰る愛が・・・何よりも強い力になるのなら私は、
貴女を愛しているから強くなれる。もっと強くなれる・・・だから」
「私も・・・貴方が好き・・・一緒にいさせてください」
「・・・」
「きゃっ・・・」
「すまない・・・だが・・・言葉では足りない」
カミュはそう言いながらもの体を抱きしめていた。
貴女の為に生まれてきたのかもしれない
貴女の生きる地上を護る為に聖闘士になったのかもしれない
貴女への愛を知る為に・・・貴女を護る為に・・・
私はいくらでも強くなろう
貴女が涙を流さぬように・・・・
誰かを護る・・・愛する人を護る・・・
それが本当の強さ