俺が力を求めたのには理由がある。
お前らが知らないだけだ・・・・。
俺は護れなかった・・・・
あいつを・・・・
俺が愛した唯一の女・・・・・
あいつは普通の女だった。
初めはいつもと一緒で、誰でもよかったんだ。
でもあいつは他の女とは違っていた。
何ていうか・・・そう純粋で・・・・
俺がこんな事思うのも可笑しいが・・・
とても・・・そう、とても綺麗だと想った。
そんなお前に知らない間に惹かれていたんだ。
それからしばらくして、は俺と住むようになった。
俺の宮で朝も昼も夜も一緒に・・・
俺はそれだけで幸せだった。
俺が任務でいない時はシュラかアフロディーテが傍にいてくれた。
あいつら、結構友情ってのを大事にするんだぜ。
あいつらのおかげで俺は気兼ねなく任務を遂行していったんだ。
ふと思っていた。
俺は何の為に戦うのか・・・・
アテナの為とか正義の為とか・・・
そんな大儀を求めてるんじゃねえ・・・
じゃあ何故?
俺は気付いた。
ああ、そうか。
俺はの為に戦っているんだ。
そして決めたんだ。
を守ると。
その笑顔が消えないように。
お前の笑みを・・・お前の未来を守ると・・・。
なのに・・・・・
それなのに俺は守れなかった。
あの日、俺は任務で聖域を離れていた。
運悪く、シュラとアフロディーテもそれぞれの任務に赴いていた。
まさか・・・・
まさかお前が事故で死んじまうなんて思ってなかった。
俺が任務から帰ってきたときに迎えてくれる優しい温もりはなく、
かわりに非情とも思える冷たい肌の感触。
そして色白の顔で・・・血の気のない唇で・・・
しっかりと閉じられたその瞳では俺を映す事など出来ない。
先に帰ってきていたシュラ達は悲しそうに俺を見た。
でも俺は・・・・
不思議と涙は出なかった。
「・・・何寝てんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そっと抱きかかえると、恐ろしく冷たい肌。
「デスマスク・・・」
アフロディーテが俺の肩に手を置く。
「何でだよ・・・・何で目ぇ覚まさねぇんだよ・・・・・」
本当は知っているのにな・・・
分かっているのに・・・・
でもそれを口にしたら・・・・
本当に終わりな気がして・・・・
全てが崩れ去っていく気がして・・・・
「デスマスク・・・・はもう・・・・」
もう一度アフロディーテが強く言う。
だが、俺はアフロディーテを睨み、視線をに移す。
しばらくして、アフロディーテが小さくため息をつきながら
自分の宮に戻っていった。
「ゆっくり寝かせて・・・・やれよ・・・・・」
シュラは短くそう言うと自分の宮に戻っていく。
俺はそんなシュラを見向きもせず、
ただ、強くを抱き締めていた。
それからだった。
力こそ全て・・・・
だから俺は強くなると誓った。
もう二度とこんな思いはしたくなかったから・・・・
でも・・・・
でも俺は力の意味が分からなくなった・・・・
見境なく人を殺め・・・・・・
罪があろうがなかろうが関係なく・・・・
教皇があいつと入れ替わっていても・・・・・
その力の強さに俺は従った・・・・・・
力こそ正義だと・・・・・・・・
・・・・・
お前を失った悲しみは消えることはないのにな・・・・・
それでも俺は執拗に力を欲した・・・・・
なぁ、・・・・・
今、力尽き、果てた俺をお前はどう見てる?
冥界の空はどこまでも暗いな・・・・
お前はここにはいないんだろう・・・・
その純粋無垢な魂はエリシオンにこそふさわしいから・・・・
『デスマスク・・・・』
ふと声が聞こえる・・・・
『デスマスク・・・・私よ・・・・・』
なのか?
うっすらと光が俺の前に浮かぶ。
その中には純白の翼を持ったお前がいた・・・
『デスマスク・・・・迎えにきたの・・・・』
迎え?
『そうよ・・・・一緒に行きましょう?』
でも俺は多くの罪を犯してきたんだぞ?
『でも貴方は見失っていただけでしょう?』
そうかもしれない・・・
でも俺は・・・・
俺はお前を守れなかった・・・・
『もういいの・・・・』
よくないだろう!
俺は一番守りたいものも守れず、
力に溺れ・・・
力こそ正義だと信じ・・・
弱い奴は殺しても何とも思わなかったんだぞ?
『いいのよ・・・貴方は十分に苦しんだんですもの・・・
私と一緒に・・・・逝きましょう・・・・・』
そう手を差し伸べ微笑むに
俺は手を伸ばす。
触れた瞬間あ溢れる涙と記憶。
の温もり・・・
の微笑み・・・・
共に過ごしたあの日々も・・・・
『デスマスク・・・もう離れないから・・・・』
ああ、離れない・・・・
『ずっと・・・ずっと一緒・・・ね?』
ああ、ずっと一緒だ・・・
『愛してる・・・』
俺もだぜ、・・・
お前を愛している・・・・
心の中の蟠りや苦しみが少しずつ消えていく・・・
優しい・・・暖かいものが流れ込んでくる・・・・
これがお前の力か・・・・・
・・・・
お前の力に溺れてもいいか?
俺の力なんかより・・・
お前の力の方がずっとずっと強いんだな・・・・
これが本当の強さなのかもしれないな・・・
なぁ、・・・・