243年前・・・
聖戦で黄金聖闘士をはじめ、多くの聖闘士がその命を燃やした。
それはアテナを護るため・・・
地上を護るため・・・
愛する人を守るため・・・







目の前には多くの敵。
倒しても倒しても現れてくる。
童虎はそれでも必死に敵を倒し続けた。


ふっ・・・シオンめ。
今頃あやつもこうして戦っているのだろう・・・

童虎は技を繰り出しながら思った。
そして、目の前に敵の姿が見えなくなり、
一瞬、気を緩めてしまう。


その刹那・・・


「童虎!危ない!!!!!」

その声に後ろを振り向く。
そこには巨大な小宇宙を放つ敵がいた。

「なっ・・・!来るな!!!!」

「くっ・・・ぐはっ!・・・」

!!!」

「くたば・・・れ・・・オーロラエクスキューション!!!!!」

童虎を庇い、負傷した黄金聖闘士。
だが、それでも必死に技を繰り出した・・・
水瓶座の黄金聖闘士・・・アクエリアスの
それが彼女の名前だった。
女であっても、男顔負けの小宇宙を持つもの。
黄金聖闘士ゆえに仮面は付けてはいない。
だが、その態度や口調は男そのものだった。

!!しっかりしろ!!」

「だ・・・大丈・・・夫だ・・・」

腹部からは止まる事無く血が溢れ出す。
童虎は必死に手で押さえるが止まらない。

「は・・・早く・・・アテ・・・ナの・・・元へ・・・」

「馬鹿か!お前を置いてなど・・・俺には・・・」

「ふっ・・・お前は・・・アテナの・・・聖闘士・・・だろうが・・・」

は笑顔を浮かべた。
シオンと童虎に匹敵する力を持った
常に3人でアテナの為に戦った仲間。
性別が違えど、同じ聖闘士として・・・
その仲間を置いてなど行けないと、童虎は言った。
しかし・・・

「私は大丈夫だ・・・身体は滅びても・・・いつかまた・・・甦・・・る」

次第に失われていく体温と意識の中、は童虎に微笑みかけた。

!!!」

「や・・・約束だ・・・いつか・・・また・・・・・・・逢お・・・う・・・・・」

ーーーーーーーーー!!!!!!!」

そう言って眠りについた。



かつての聖戦で、生き残ったのはシオンと童虎のみ。
そして、童虎を護り死んだ聖闘士は・・・いつか甦ると約束した。
243年の時を越え・・・再びめぐり逢えるとは・・・



「・・・聞いて居るのか?」

シオンの言葉にはっとする童虎。
姿はあの時のままの二人。
しかし、その生きた年月はあまりにも長かった。

「童虎よ・・・お前らしくない。何を考えている・・・」

「ふんっ・・・お主こそ・・・らしくないの・・・」

二人はそう言うとお茶をすする。
そして少し淋しげに笑った。

「何を考えておる・・・」

「お主と大して変わらん・・・」

「・・・・・・か?」

「そうじゃ・・・そろそろ命日じゃからの・・・」

シオンと童虎はふと外を見る。
今は平穏な毎日。
弟子達は立派に成長し、自分達も本来の役目を全うしている。
シオンは教皇として・・・
童虎は天秤座の聖闘士として・・・

「243年も墓参りに行っておらぬな・・・」

「そうじゃの・・・」

童虎はお茶を飲み干すと席を立つ。
それに続いてシオンも席を立った。



聖域にある墓所・・・
ここには多くの聖闘士達がその聖衣の色に分かれて眠っている。
童虎とシオンはある墓の前で膝を着いた。

「久しいの・・・。」

「色々あってここに来られなかった・・・悪かったの・・・」

そう言って、懐かしそうに墓石に触れる。
その墓石には『黄金聖闘士水瓶座』と刻まれていた。

「この平和はお主があの時護ってくれたおかげじゃ」

童虎は淋しげに名前をなぞる。
シオンは知っていた。
が童虎を想っていた事を。
しかし、自分達はアテナに仕える聖闘士。
想いを告げるなど出来なかった。
いや、己の想いよりアテナを護るという想いが強かったから。

「童虎よ・・・お前は知っていたか?」

「何をじゃ?」

もう過去の話だからいいだろう・・・
シオンはそう思うと話始めた。

の気持ちだ・・・」

「ワシを見縊るなよ・・・シオン。」

「やはりな・・・」

「ワシとてを想っておったのだから・・・」

「そうか・・・」

「だがワシらはアテナの聖闘士。アテナの為、地上の為に戦う事が一番じゃ。」

だからその想いが二人を繋いでいたから。
お互いを想う気持ち以上に
地上とアテナを護るというその想いが強かっただけと、
童虎はシオンに言った。

「そうか・・・」

静かにシオンは頷いた。

「約束もしたしの・・・」

「約束?」

「いつかまた逢おうと・・・」

童虎の瞳は墓石に向けられたまま。
だが、シオンはそんな童虎を見て安心した。
いや、安心というよりは再認識。
どこまでも信念を貫き、決して約束を破らない男。
ポンと軽く童虎の肩を叩く。

「ならば今暫し待つとしよう・・・戦友との再会をの・・・」

「そうじゃの・・・さて・・・帰るとするか・・・」










暫くして、シオンと童虎はアテナの呼び出しを受けた。
二人は聖衣を纏い、アテナの御前に控えた。

「アテナ・・・お呼びですか?」

「何かありましたか?」

シオンと童虎はにこやかなアテナにそう言う。

「ええ、シオン、それに童虎。大切な話があるのです。」

「はっ・・・」

そう言うと、現代のアテナ・・・沙織は奥から一人の女性を連れてきた。

「彼女の名は。私の友達です。」

「アテナのご友人ですか・・・」

童虎は一瞬動きが止まる。
それはシオンも同じ事。
そのという女性はそっくりだった。
あのに・・・

「彼女は特別な方で・・・まあ、詳しくは本人から聞いてください。」

沙織はそう微笑むと、財団の仕事があるからとサガやカミュを連れて聖地を発った。








殿は・・・アテナとどういう・・・」

天秤宮で、童虎はと二人きりだった。
本当はシオンも話をしたいと思っていたのだが、
サガはアテナの護衛について行った為、仕事をためるわけにはいかないと
教皇の間へと戻っていた。

「友達です。学校の・・・」

そう微笑むに、童虎は少し戸惑う。
と姿が同じばかりではなく、声も同じ。
しかし、目の前にいるのは女性らしさが溢れる人。

「そうか・・・して殿は・・・」

「・・・・・・・・・ぷっ」

突然吹き出して笑い出す
童虎は呆気に取られた。
何か可笑しなことでも言ったか?と。
しかし、次の瞬間の口から出た言葉に更に呆気に取られてしまった。


「らしくないな・・・童虎。」


その台詞は243年前に聞きなれていた言葉。

・・・ど」

「クスクスクス・・・童虎。まさか老人ボケ?」

そう言って笑う

「まさか・・・」

「そのまさかよ・・・ったくこれで思い出すでしょう?」

そう言うとはテーブルの上の湯のみを覗き込む。
その様子をじっと見つめる童虎。
そして目にしたもの。
それは・・・

「・・・いくよ」

見る見るうちに湯気の立つお茶がピキピキと音を立てて凍り始めた。
その力は間違いなく氷を操る聖闘士の力。
童虎は目を見開きを見つめた。

・・・か?」

「随分待たせた?」

!!!」

童虎は思い切りを抱きしめた。

「うっ・・・苦しい!」

「243年も待たせよって・・・」

「童虎!私一応女なの!!!」

その言葉にはっと腕の中の人物を見た。
少し頬を赤らめて・・・

・・・」

「今は!私はもう聖闘士じゃないよ・・・」

そう言って微笑む
確かに昔の男勝りというものはなく女らしさが溢れている。
いや・・・なんというか・・・
愛しいという感情がこみ上げる。


「なぁ、童虎。私あの時言えなかったこと・・・言いたい。」

「なんじゃ?」

「ストップ!その老人口調治してよ・・・クスっ」

「といわれてもの・・・見かけは18でも実際は243年生きておったしの・・・」

「そっか・・・」

「だが・・・ワシ・・・コホン!・・・俺はずっと待ってたぞ」

急に口調を変えて、今度は優しく抱きしめる童虎。

「私を?」

「そうだ・・・」

「あのね、私達、あの時代ではちゃんと想いを告げられなかったから・・・」

は童虎の背に腕を回す。

「私、ずっと貴方が好きだった。愛してた。」

「俺もだ・・・。」

「だから今はよ・・・」

「ああ、。俺は今もお前を愛している。」

童虎は照れながらに告げた。


243年振りに出逢い、ようやく告げることが出来た想い。

「約束・・・したでしょ?」

「ああ・・・」

「いつかまた逢おうって・・・」

「ああ・・・」

「逢えた感想は?」

の言葉に童虎は微笑み、そっと顔を近づけた。
暫くしてお互いの顔を見つめあう。
ほんのり色づいた頬をしたの顔を見て、また微笑む童虎。

「これが感想だ・・・。」

「今度はずっと側にいたいな・・・」

「俺が護る・・・この地上もアテナもも」











「だぁぁぁぁぁぁぁ!!!童虎!!!貴様!!!何度言えば分かるのだ!!」

「なっ・・・何をする!シオン!!お主が言うとおりにしたではないか!!」

教皇の間をリメイクして欲しいと頼まれた童虎は、
中国系の装飾を飾った。
しかし、シオンはギリシャ風が良かったらしく、
童虎を攻めていた。

「問答無用!!くらえ!!スターダストレボリューション!!!」

シオンの技をくらいながら童虎は自分の技も繰り出す。

「いきなり何をする!廬山百龍覇!!!!!」



「貴様ら何をしている!!!」

!!!』

見事にシオンと童虎の声が重なる。
はハッとして口元を押さえた。
ついつい昔の口調が出てしまったのである。
そして一つ咳払いをすると今の口調で話し始めた。

「コホンっ・・・。アテナのいらっしゃるこの聖域で・・・千日戦争でもする気なの!!!」

「ま・・・まて・・・!」

「・・・シオンはうるさい!!!」

「うわっ・・・」

シオンはもろにの凍気を足元にくらいその場で動けなくなった。

「・・・で・・・童虎・・・」

「すまん・・・・・・」

「・・・・・・許して欲しい?」

「うむ・・・」

「上手くいかないかもしれないけど、氷の棺チックなのがいい?」

「いや・・・それは・・・」

「じゃぁ、キスして・・・クス」

『なっ!接吻とな!!!』

またもや童虎とシオンの声が重なる。

「いかーーーん!断じて許さんぞーーー童虎!!!」

シオンは両足をの凍気でしっかり固定されていて動けない。
童虎はふぅとため息を付くと、の腰に手を回す。

「童虎!!!貴様ーーー!!!私の目の前で何と・・・あぁ!!!やめろ!!!」

「・・・・・・・・・本当にシオンは昔からうるさいな・・・」

はキッとシオンを睨む。
そして何やら唇を動かした。
その唇の動きで、シオンは固まる。

「・・・・・・・・・・・・んっ」

触れるだけのキスをに与えると、童虎は苦笑してシオンを見た。






こいつには敵わない・・・
昔からそうだっただろう?