俺は家族の愛情なんて知らなかった。
サガだけが俺の家族だった。
他の聖闘士達は俺に『家族』のような暖かさを与えてくれた。
そして、お前は・・・
「おい、サガ。今日は訓練を休む。」
カノンは双児宮で教皇補佐服に着替えるサガに向かって言う。
「愚弟、何を言い出す。今日は・・・」
「いいから、休むと言ってるんだ!この馬鹿兄。」
「理由を言えと言っているのだ、カノンよ。」
「とデートだ。」
「なっ・・・」
「ふっ、悔しいか?サガよ?」
「貴様・・・聖闘士を何と思っているのだ!」
「好きな女と会うだけだろうが!!!」
朝から喧嘩モード全快。
双児宮は異様な小宇宙が漂っていた。
「ふっ、何を言っても無駄なようだな・・・カノン。」
「ようやく分かったか?」
「ああ、これでも食らえ!」
サガはそう言って小宇宙を高める。
カノンはサガが何をしようとしているのかすぐ分かり、
取り合えず自分も小宇宙を高めた。
そして、二人の声が重なる。
「「ギャラクシアンエクス・・・」」
「馬鹿ですかーーーーー!!!!」
鶴の一声。
まさしく、その言葉が合った。
サガとカノンは声の発された方を見る。
そこには、一人の女性が仁王立ちしていた。
「「!!」」
と呼ばれた女性。
腰ほどの黒髪と漆黒の瞳。
決して強くはなさそうな女性。
しかし、サガとカノンにとっては恐ろしい存在だった。
「何度言ったら分かるんですか!!!お二人とも!!」
「「すっ・・・すまん」」
「すまん・・・じゃないですよ!もう!!!この前は双児宮の壁に穴を開けるし・・・
その前は聖域中の花をどっかにやっちゃうし・・・そのもっと前は・・・」
「「悪かった!!!」」
サガとカノンは必死に謝った。
はどの黄金聖闘士に対してもはっきりとモノを言う。
自分をしっかり持ち、それを行動に移せる。
その心意気に引かれたのは、アテナだけでなく聖闘士達もだった。
「ったく・・・で、今日は何が喧嘩の原因なんですか?」
「お前とデートすると言ったらサガが妬んでな・・・」
「「なっ!!」」
今度はサガとの声が重なる。
サガはカノンの頭を殴った。
「何をする!馬鹿兄!!」
「貴様が聖闘士としてきちんと訓練すれば問題ないのだ!」
またサガとカノンの仲が険悪になる。
は頭痛を覚えた。
どうして素直になれないのか・・・この二人は。
「サガ、今日はカノンに選んで戴きたいものがあるんです。」
が真剣な眼差しでサガを見つめる。
この視線に弱いサガ。
「・・・それならそうと言えば私とて。」
そう言うとサガはカノンの腕を掴む。
「っ!!何す・・・」
「愚弟だが、センスはいい。おい、カノン。今日はに免じて許してやる。」
そう言うとさっさと教皇の間に向かって言った。
「・・・」
「あのね、サガだって物分り悪いわけじゃないんだから。」
子供の様にに抱きつくカノンを、は優しく抱きしめた。
「それにね、カノンとサガは双子なんだから、もっと仲良くって約束したでしょ?」
カノンの髪を撫でながらは微笑む。
カノンはそんなを見て苦笑した。
「まるで母親だな・・・」
「あら?分かっちゃった?」
「?」
頭の上に?マークをたくさん出しているカノンを見てくすりと笑う。
そして、カノンの頭を自分のお腹に当てる。
「まだ分からない?」
「おい・・・」
カノンは立ち上がり、を見つめる。
は自分のお腹を愛しそうに撫でながら言った。
「父親ってこんなものなのかな?駄目なパパですね?」
父親?
何のことだ?
パパ?
誰が?
・・・俺が!?
「カノン?・・・きゃっ!カカカカカノン!!!」
「本当か!?本当なんだな!!!」
カノンはを抱き上げた。
そして、その顔は笑顔で溢れる。
「俺達の子供なんだな!!」
「きゃーーー!!!お腹の子に障るーーー!!!」
「すっすまんっ」
慌ててを降ろす。
そして、優しく抱きしめた。
「もう!」
「嬉しくてつい・・・大丈夫だったか?」
「大丈夫よ!」
「で、俺に選んで欲しいものって・・・」
「この子の服よ♪」
そう言ってはカノンの頬にキスをした。
「きっとカノンに似てるよ。あっでもサガにも似てそう!」
カノンは少し抱きしめる腕に力を入れる。
そして耳元で囁いた。
「俺に似てるならあいつにも似てるさ・・・でも俺の子だ。」
その言葉を聞いて微笑む。
カノン・・・貴方は本当はサガが好きなのね。
大切なお兄さんだもの。
カノンとサガ。
二人で一つなんだから。
「ねぇ、カノン。」
「何だ?」
「男の子かな?女の子かな?」
「どちらでもいいさ。」
「もうっ!!」
頬を膨らませるにカノンは素早くキスをした。
は少し頬を赤らめる。
「男でも女でも・・・きっと可愛いだろうからな」
「・・・うん」
「俺との子だ・・・可愛いに決まってる」
「・・・うん」
「たくさん、愛してやるよ。と同じくらい・・・な?」
「うん!」
はカノンに抱きつく。
そんなをカノンは優しく抱きとめた。
そうしてもういとどキスを交わす。
「愛している・・・。」
「私もカノンを愛してる。」
「これからもずっとだ・・・」
「これからは家族だよ!」
の言葉に微笑むカノン。
そして、そっとその手を握る。
「じゃぁ、行くか?」
「そうだねっ!」
双児宮を出ていく二人。
これから家族になるために・・・
新しい家族の絆の誕生を喜びながら・・・