君だけのナイトになる為には

どうすればいいのか

言葉にする事が苦手な俺は

それを君の口から聞きたくて

今日もまた君の元へと足を運ぶ




「また来たの?・・・余程暇なのかしら?」

「・・・さぁ」


ゆっくりと扉を開くと、読書をしていたのか

机の上に読みかけであろう本が数冊散らばっていた。

それでもいいならどうぞと彼女は私を招き入れてくれた。


「お茶でいいかしら?」

「ああ。」

「散らかっているけど、適当に座ってて」

「ああ」


そう言うと、俺は本の隙間に腰を下ろした。

まるで今日も俺が来る事を知っていたかのように、

ちょうど俺が座った場所の目の前には灰皿が置いてある。

中身のなくなている灰皿に、新しい灰を落とした頃、彼女は俺の元へと戻ってきた。


「今日は何事かしら?」

「・・・・・・・別に」

「そう、で、?」

「なぁ、お前って俺とサガをどうして見分ける事が出来たんだ?」


そう、俺だって黙っていればサガと間違えられる。

聖域にいる黄金聖闘士どもは、コスモの若干の違いで見分けられるし、

他の女官どもは影で双子聖闘士の落ちぶれ様などと言ってる。

そんな女官どもを見ているのが嫌で、海界にばかり籠っていた。

しばらくしてからデスマスクからの手紙の中に、最近面白い女官が来たとあった。

女好きのデスマスクの言う女など他と大差変わらないと思っていたが、

ちょうどアテナへの書類もあったので、久しぶりに聖域に足を向けた。

そこで見た女が彼女・・・だった。

他の女官どもと狎れ合う事なく、黙々と仕事をこなす

自然と目で追うようになって、そして俺が聖域を訪れる時間も多くなった。


「貴方とサガ様とでは全然違うわ。サガ様は同じように煙草を嗜まれてももっと上品だし、
貴方のように人の心の内を探ろうとはなさらない。」

「フン、俺には様なんかつけない癖に・・・」

「妬いているの?カノン『様』ともあろうお方が?」

「よせ、気色悪い」

「ふふっ、そうでしょう?っ!!」

!?」

「・・・・・・・・」


少しこめかみを抑えて机に手をつくが

その手を滑らせてしまったに、俺は慌てて手を差し出す。


「「あっ!」」


互いに抱き合う格好になってしまった二人。

は頬を赤らめ、俺の腕から逃れようとしたが、そうはさせない。

俺は少し力を強め、を抱きしめた。


、お前、誰か想う奴はいるのか?」

「・・・ええ、いますよ?」

「・・・・・・・・」

「いつも皆に慕われていて、神々しい方。とても強くて、優しくて・・・それでとても温かい方で・・・」

「それは・・・」


サガの事を言っていると俺はすぐに気がついた。

やはりもサガのような完璧な聖職者のような奴が好きなのかと苛立ちを覚える。


「・・・・・」

「でもそれに気がつかずに素直ではなくて意地っ張りで・・・」

「!?」

「私の気持ちなど知る由もなく毎日毎日飽きずに話しをする方よ」


ふわりと俺に向かって笑みを向けるに、少々呆気にとられた顔をしていた。


「どうしたの?カノン。」

「あ、それは俺の事・・なのか?」


俺らしくないと思いながらの答えを待った。

そんな俺の言葉が意外だったのか、はしばらくすると声をあげて笑いだした。


「なっ!何だよ!!」

「ふふふふふふふふふっ!!いえ、いつも自信過剰な貴方らしくないと思って!!」

「・・・悪かったな」

「・・・ねぇ、カノン。」

「何だ?」


ふてくされている俺に、はそっと俺の背に腕を回してきた。

腕から伝わる柔らかな感触と温もりに、俺もを抱きしめる腕に力を込めた。


「私、昔から私だけを守ってくれる騎士を探していたの」

「ずいぶんとお子様な事を言うんだな」

「そう?女の子なら誰でもそう思うわ」

「・・・俺が護ってやるさ」

「カノン」

「俺がお前だけのナイトになってやる。だからお前は俺にだけ護られる姫でいるんだな」


そういうと、俺はそっとの手を取り、そこに触れるだけのキスをする。

それはまるでナイトが忠誠を誓う証のように・・・







(2009.09.03)