貴女も私も忘れるわけがないでしょう・・・
昔から貴女は私だけの傀儡なのですから・・・


ああ、今日もまた貴女に逢えると思うだけで
この胸が震えますよ、




「また来たの?ミーノス」

「ええ、。」

「冥界とやらも相当暇なのね?」

「そんな事はありませんよ。」



そう言って苦笑するミーノスにはテーブルの上にあった煙草を取り出す。
ミーノスの方をちらりと見ると、どうぞと手で合図をする。
は、それを確認すると、煙草を口にくわえ、ライターで火を付ける。


フゥーーーーーーっ


紫煙がの口から吐き出される。
そんなごく当たり前の仕草にも、ミーノスは湧きあがる情を感じた。


「今日は冥衣を着ていないようなだけど?」

「ええ、故郷に帰っていましたからね」

「ああ、それで・・・」


じっとミーノスを見る
白銀の髪を黒い紐で一つに結え、黒いロングコートを着ていたミーノス。
コートを取ると、下には値が張るだろう上等の布を使ったスーツが現れた。


「・・・何です?」

「相変わらず貴族だねぇ」

「ふふ、そうでもありませんよ。」

「何であたしみたいなのに興味を持ったんだか・・・」

「貴女は覚えていないのかもしれませんけどね?」

「ああ、前世ってやつ?」

「そうです。」

「ふーん・・・・」


そう言ってはまた紫煙を吐き出す。
つまらないと言うように手元のカップに入った冷めたコーヒーを口に含んだ。

カツ・・・カツ・・・

一歩ずつ、ミーノスはの元へと近付く。
気にしない素振りではカップを元に戻すと、また紫煙を吐き出した。


「・・・・何?」

「いえ、別に?」


ミーノスは襟元を緩めると、が座っているソファの目の前までくる。
は少し腰を上げて、ミーノスが座れる場所を作る。
ミーノスはそれに二コリと笑うと、の隣に座った。


、貴女はもう思いだしているはずですよ?」

「何の事?」

「くすっ・・・知らぬふりですか?」

「だからっ!一体何のこっ・・・・!!」


の腰にさり気なく手を回していたミーノスは、
そのままぐいっとを己の胸の中に閉じ込めた。
そして、の耳元でこれ以上ない程の低く、甘い声で囁いた。


「私を誰だと思っているのです?」

「っ・・・・」

「知らぬふりをするのならあの名で呼んで差し上げましょうか?」

「なっ・・・」

「・・・・

「!!!」

「ほら、やはり貴女は思い出していますね?」

「・・・・・・・・」

「いい加減諦めなさい。」

「・・・・やっと逃げられたと思ったのに・・・」

「ええ、そうでしょうね」

「どうしてまたあたしの時代に聖戦なんてあったんだろう」

「さぁ?」

「・・・・・・・あんたは【あの時】のミーノスと違うはずなのに」

「そうですね、ですがやはり前世の私も今の私も変わりませんよ?何一つね?」


そう答えると、ミーノスはの顎を掴んで自分の顔へと近付ける。


「あたしはまた、あんたの傀儡に成り下がるのはイヤよ。」

「ふふふっ、同じと思いますか?・・・いえ、

「!?」

は本当に可愛らしい傀儡でした。ですが、今の貴女はもっと私を楽しませてくれそうですね?」


そっと唇を重ね、離れる瞬間にぺろりとその唇を舐める。


「あの時以上に愛して差し上げますよ?私の大切な・・・極上の傀儡として・・・ね?」



忘れるはずなんかないでしょう?
貴方に捕らわれたその瞬間から、私の心も体も
貴方だけが遊べる傀儡になっているのだから。

ああ、また貴方の糸に操られるのね・・・