貴方はどうしてここまで私の中に入り込もうとするの?
私はもう淋しい想いはしたくないのに・・・
でも、貴方は私から離れないって・・・
私が死ぬまで、側にいてくれると
約束してくれた…



ムウはの姿を探す。
シャカと会ってから、そう時間はたっていない。
だから、まだ12宮のどこかにいるはずだと。


!!」

ムウはの姿を見つけ、大声で名を呼んだ。

「ムっ・・・ムウ様???」

は驚いた表情でムウを見上げる。

「あっ、すみません。急に大声で・・・」

「いいんです♪」

そして、はあの笑みでムウに答える。



また・・・どうしてそんな笑顔が出せるのか・・・




ムウは一瞬困惑した表情になる。
それは、の笑みが偽りだとはっきり自覚してしまったから。
シャカとの会話が脳裏を過る。

『君らしくしていれば・・・』

ムウはふうと軽くため息をすると、の腕を掴んで歩き出した。

「えっ・・・あっ・・・ムウ様!?」

「いいから来てください。」

ムウはを連れて歩き出した。
は初めは困惑していたが、
ムウの手の温もりに何故か安心感が生まれている事に気付く。






「ここです。」

ムウは12宮の外れにある小さな泉に連れてきた。
そこには、色とりどりの花が咲き乱れ、小鳥の囀りだけが響く場所。
ムウは泉の畔に腰掛ける。
もそっとムウの隣に腰掛けた。

「あっ・・・あの・・・」

「・・・貴女はどうして笑えるのですか?」

ムウはゴロンと仰向けに寝そべる。

「えっ??」

「単刀直入に聞きます。貴女はどうして本心を隠すのです?」

その言葉を聞くと同時に、の表情がみるみる変わる。

「・・・貴女がその笑みで本心を隠しているのではないかと思ったのです。」

「ど・・・うして?」

は冷たい視線でムウを見つめる。
いや、その視線は悲しみに満ちている。
ムウは確信した。
そして、身体は勝手に動いていた。

寝そべっていたはずのムウは、を抱きしめていた。
ムウその突然の行動に、は目を見張る。

「貴女が本心から笑顔を見せてくれる為には・・・どうすればいいのですか?」

「ム・・・ウ様」

「私は・・・貴女の本当の笑顔が見たいのです。」

ムウはそっとの顔に手を添える。
の瞳からは、涙が溢れていた。

「わっ・・・私・・・どうし・・・て泣い・・・てる?」

「本当は淋しかったんですよ・・・」

ムウは優しくその涙を拭っていく。

「淋し・・・い?」

「そうです。どんな理由があったのか、私には分かりません。ですが・・・」

ムウはフッと笑顔を見せる。

「私はいつでも貴女の味方です。」

その言葉を聞くと同時には泣き崩れた。

「わっ…私、離れていくのが嫌だったのです。
 誰か…を愛…せば、その人と…の別れ…が辛くな…ります。」

だから、誰も側にいないように・・・
誰からも興味を持たれない様に…
そんな事を考えていたら、周りの風景が冷めて見えた

その事をムウに伝えた。
終始、ムウはを抱きしめたままだった。
の話が終わると、ムウはそっとに微笑んだ。

「私は離れませんよ、。」

「ムウ様・・・」

「貴女の心の内、聞かせてもらえたのは私だけでしょう?」

その言葉に頷く

「私は、の本当の笑顔が見たい。だから、少しづつでいい。」


『私に打ち明けていってくれませんか?』








あれから2年。
は変わらない笑顔を見せる。
いや、その瞳には優しさが溢れていた。

「おはよう、。」

「あっ、シャカ様。おはようございます!!」

は処女宮の掃除に来ていた。

「君は変わったな・・・」

「そうですか?」

「ああ、世界を優しい目で見ている。」

シャカはの頭をそっと撫でた。



「私の妻に気安く触るとは貴方もいい度胸ですね?シャカ?」

シャカが振り返ると、そこには腰に手を当てたムウがいた。

「ムウか。触って壊れるものでもあるまい?」

「私が嫌なんですよ」

「全く・・・君の愛妻振りにはサガ達も困惑しているようだった。」

「いいんですよ。、掃除が終わったらあそこへ行きますよ。」

ムウはにそう言うと、処女宮を後にした。

「君の夫は本当に・・・」

「あれでいいんですよっシャカ様!あの方らしくって」

はそう微笑むと、掃除を終わらせてムウの元へと向かった。

ムウとが行った場所。
それは、初めてがムウに心境を打ち明けた場所。
そして、初めてキスを交わした場所。

、あれから2年ですね・・・」

「はい」

「貴女は変わりました・・・その笑顔が本物になれてよかった・・・」

ムウは優しくを抱きしめキスを落とした。

「貴方のおかげです・・・貴方が私の冷めた心を溶かして、暖めてくれたから。」

「約束しましたからね・・・」

「そうですね・・・」


あの時、ムウはを抱きしめたまま約束した。

、私は決して貴女から離れません。』

『ムウ様・・・』

が好きです。愛しています。』

そして、そっとその頬にキスをする。



『貴女が死ぬまでずっと側にいますよ。』



その約束を果たすまではと、ムウはどんな時でもの側にいた。
どんな戦いの後も・・・

・・・愛しています。」

「私も・・・愛しています。」




どんな時でも離れないと・・・
その誓いを護ってくれると信じられたのは、貴方だけ。
私の心を暖めてくれる・・・
そんな貴方を愛しています。