最近の聖域は何やら騒がしい。
アテナ不在が多いせいか、黄金聖闘士達だけで
執務をこなしていた。
そんな中、アテナの代わりを勤める少女がいた。
その少女をめぐる争いがあったのだが・・・






「おはようございます!シオン、サガ、ムウ!!」

アテナ神殿に朝の挨拶に来たシオン達は、
その少女の姿を見てニコリと微笑む。

「ああ、。おはよう。」

「おはよう、。」

「おはようございます、。今日も貴女がアテナの代理ですか?」

ムウの言葉に、はにこりと微笑み頷く。
ムウを始めとする黄金聖闘士達は、このの笑顔が大好きだった。

初めてと出逢ったのはアテナとの謁見の時。
アテナに、彼女の事を紹介された時、
黄金聖闘士達は一瞬で惹かれた。

愛らしい

それが彼女の第一印象だった。
次第に仕事にも慣れ、テキパキとこなすその仕事っぷりに、
終いにはシオンや童虚までもがに惹かれていった。

「あっ、シオン。今日の執務は貴方たちなんだね。じゃあ、さっそく!!」

そう言って仕事を始めた。
仕事と言っても、今日は溜まっている書類整理と、
報告書整理。
昼過ぎには終わっていた。





「ああっ、やっと終わったね。」

「さすがはだ。仕事も速いな。」

「ありがとうサガ。あっ、お茶でも入れようかな〜ムウは紅茶がいいんだよね?
シオンは玉露で、サガはエスプレッソだったね。」

の言葉に三人は頷き、お茶を入れる為に執務室を出て行くを見送った。

「今日はを誘って映画でも行くかな・・・」

サガの呟きにむっとするシオンとムウ。

「サガよ、お前にはまだやってもらわねばならない仕事があるのだ。」

シオンはすかさずサガの妨害に走る。

「シオン、何を仰っているのですか?」

眉間に皺を寄せ、シオンを睨むサガ。
シオンはふんと笑いヒラヒラとサガに一枚の書類を手渡した。

「・・・・・・なっ!!あの愚弟がぁぁぁぁ!!!!!!!」

ぐしゃりと書類を握り締め、サガは執務室を叫びながら出て行った。

「・・・・・・シオン、何を手渡したのです?」

ムウはふんぞり返っているシオンに聞いた。

「カノンの報告書だ。」

「ああ・・・あの・・・」

「そうだ、任務先での宴会の費用とかな・・・」

この人は全く・・・と思いつつも、シオンの次の言葉に驚愕するムウ。

「では、は私と出掛けるように計らうか・・・」

「!!!!!」

《まずい・・・これは非常にまずい・・我が大恩ある師とは言え、このままでは・・・》

このままではをシオンに取られてしまうと思うムウ。
実はこのシオンに泣かされた女官たちの数は半端ではなく、
その女官たちの面倒を全て見てきたムウは必死に考えた。
そして・・・

「あれ?ムウ、シオン。サガは??」

丁度そこへお茶を入れ終えたが帰ってきた。
シオンは極上の笑みを浮かべ、ムウの頬も自然と緩くなる。

「サガは何か用があるらしくてな・・・ところで。今日は何かよ・・・・!!!」

「ん?何?シオン。」

急に言葉に詰まったシオンの心配をする

「ああ、おそらく持病の腹痛でも出たのでしょう。心配には及びませんよ、。」

確かにムウの言う通り、シオンは腹部を押さえて冷や汗をかいていた。

「大丈夫かな?」

「腐っても黄金聖闘士。しかも教皇です、心配はいらないでしょう、ねぇ、シオン?」

からは見えないムウの顔。
シオンはきっとムウを睨む。
ムウはドス黒い笑みを浮かべる。

【シオン、例え貴方でも邪魔はさせませんよ。】

【ムっ・・・ムウ・・・お前、師に向かって何を・・・】

【いやですね〜シオン。私はちょっと腹部に触れただけではないですか?】

【どこがかぁぁぁぁ!!くっ・・・しかもサイコキネシス付きで殴るか!?・・・】

そんな小宇宙のやり取りなど、には分からず、
ただ、心配そうにシオンを見ていた。
そんなの様子が気に食わないムウは、さらに・・・


「うくっ・・・!!!」

「シオン、ああ、いけませんね。今日はお休みになられた方がいいでしょう。」

そう・・・
さらにサイコキネシスでシオンを攻撃。
完全に腹部を押さえて呻いているシオンに黒い笑みでそう言うと、
には優しい笑みを浮かべて言う。

、今日これから私と出掛けませんか?」

「えっ・・・でもシオンが・・・」

「大丈夫ですよ、シオンは。ゆっくり休めばすぐにでも治るでしょう。」

にこりと微笑むムウに、ほんのり頬を紅く染める
そんなの様子に、シオンはむっとし、ムウを睨むが・・・

【ではシオン。私たちは出掛けますから・・・ふふっ。後の仕事お願いしますね。】

小宇宙で話しかけると、の手を引いて執務室を出て行った。
残されたシオンはぎりっと歯を食いしばりながら・・・

「ムウよ・・・私を誰だと思っているのだ・・・後で見ておれよ・・・ぐぁっ・・・」

そう拳を握り締めると床にぶっ倒れてしまった。










聖域のすぐ近くの湖。
ここはムウの安らぎの場所でもあった。
花々が咲き誇るこの湖の畔にムウとは来ていた。

「うわ〜綺麗なところ。ムウ、ありがとう!!」

瞳をきらきらと輝かせ、目の前の光景にうっとりするに、
ムウは極上の笑みを浮かべて、

「礼には及びません。私が貴女と来たかったのですから。」

と応えた。

「シオン、大丈夫かな・・・。」

ふとの言葉に、ムウは少し悲しげな表情をする。
そして、の手を取り己の頬に当てながら聞いた。

・・・貴女はシオンが好きなのですか?」

ドキリとした。
その切なげに自分を見つめるムウの表情に、
は頬を紅く染める。

「ちっ・・・違うよ!!」

「ならば今は私のことだけを考えてください。
、貴女の口から別の男性の名が出るのはとても心苦しいのです。」

「ムウ・・・?」

そして、その手の甲にそっと唇を重ねるムウの姿に、
さらにの体温は上昇する。

「・・・・・・///////」

「・・・・・・、私は貴女が大好きです。」

真摯な瞳でを見るムウ。
ムウはゆっくりとその顔をの顔に近付けていった。

「貴女は?・・・もし貴女が私を何とも思っていないのであればここで止めます。
ですが・・・貴女も私と同じ気持ちなのであれば・・・」

「わっ・・・私も・・・・・・・・・き/////」

「えっ?」

蚊の鳴くような小さな声。
だがはっきりとムウの耳には聞こえた。

「ムウが大好き・・・/////」

ムウはふわっと微笑み、の唇に触れるだけのキスをした。
そして、優しく抱きしめる。

「ああ、よかった。これからは私の事だけを考えてくださいね。
あっ、もちろん、二人だけの時で構いませんから。」

「うん!!」












「ちっ・・・をムウに取られたか・・・」

「シっ・・・シオン。やばいですよ、これは・・・」

二人の様子を木陰から覗いていたのはシオンとサガだった。
小宇宙を完全に消し、様子を伺っていたのだ。

「ムウめ・・・覚えておれ〜明日は私は休む。」

「えっ・・・明日の執務はムウとシオンだけでは・・・」

「・・・・・・仕返しだ。」

「はぁ・・・」

シオンの子供のような仕返しの内容にサガは苦笑しつつも、
内心はシオンと同じ気持ちだったので何も言わなかった。

翌日、一人執務に追われ苦戦するムウの姿があったとか・・・。
しかし、その傍にがいて二人きりになっていた執務室の様子を後から聞いたシオンが
また悔しそうな顔をしていたという事も・・・。