いつもと変わらない朝。
だけど、本当はいつもと全く違う朝…
その理由は…貴方の存在。
アテナに仕える巫女としては聖地にやってきた。
初めは戸惑いながらこなしていた仕事も、今では何とかこなせるようになった。
黄金聖闘士達もそんなの姿を見て、常に手助けをしていた。
そして、好意を持つ聖闘士の数は多かった。
「朝から精がでますね、。」
「あっ、おはようございます!ムウ様。」
ムウは白羊宮の掃除にやってきたに声をかける。
「今日は貴方が担当ですか。」
「はい!掃除が終わったらお茶をお煎れいたしますね。」
「貴方が煎れたお茶は本当においしいですから、お待ちしていますよ。」
そう言ってムウは奥の部屋に移動した。
「さて、今日は特に聖衣の修復もないですし、読書でもしましょうか。」
ムウはソファに腰掛けて本を開く。
『春風は遠く…でも色とりどりの花々は暖かい日差しを待っている…』
心地よい歌声がムウの耳に届く。
は掃除の時、いつもこの歌を歌う。
季節はやっぱり春が好きという彼女らしく、その存在も春の日差しのような存在だと周囲が言っている。
その通りだとムウは思っていた。
いつも皆を気に掛けてくれる優しい存在。
アテナのように自愛に満ちたは、人々だけではなく、自然にも優しかった。
「ふぅ…やっと掃除が終わったわ。」
は少し伸びをすると、ムウがいるであろう奥の部屋に向かって歩きだした。
コンコン
「はい、ですか?」
中から落ち着いたムウの声が聞こえる。
「はい、ムウ様。掃除が終わったのでお茶をお持ちしようと思うのですが…」
ムウは扉を開けて、の顔を見る。
「そうですか、お待ちしていましたよ。」
「そっ…それでですね。確か今日はムウ様、お休みですよね?」
「そうですが…」
は勇気を振り絞ってムウに言葉を伝えた。
「今日は私も掃除だけで仕事が終わるんです。ですから、外でお茶をと…」
はムウを見る。
ムウは、呆然としてを見ていた。
「あっ…あの…ご迷惑でしたか?」
少し悲しそうな。
ムウは慌てて笑顔で答える。
「いえいえ、貴女があまりにも嬉しい事をおっしゃってくださるので…少し驚いただけです。」
「それじゃ…」
は嬉しそうにムウを見つめる。
「ええ、支度を整えて行きましょう。、貴女も準備してきたらいいでしょう。」
「はい!!では、すぐに準備してきますね。私、すごくいい所を知ってるんですvv」
そう言ってはムウに背を向けて走り出した。
その姿があまりにも可愛らしくて、ムウはつい微笑んでしまった。
(全く…貴女という方は本当に純粋なのですね。)
「さて、私も支度を整えますか…」
太陽がちょうど真上に来た頃、ムウは支度を終え、白羊宮の入り口にいた。
柱にもたれ、じっとが来るのを待っていた。
「ムウ様ーーー!!」
淡い蒼のワンピースを着たが駆けてくる。
手にはバスケットを持っていた。
「そんなに走ると転びますよ?」
クスクスと笑いながらムウはを迎えた。
「もう!私、そんなに子どもじゃありません!!」
「クスッ、はいはい。ところでその荷物は何ですか?」
「せっかくだから、少しお腹にたまるものを用意してきたんです。」
「中身は楽しみにしておきましょうか。では、行きましょう。」
ムウはすっと手を差し出した。
は少し頬を赤らめながらもその手を取った。
「綺麗なところでしょ??」
「ええ、景色がとても綺麗ですね。」
ムウとは海の見える丘に来ていた。
「さぁ、ムウ様。お茶にしましょう」
そう言ってはバスケットからティーセットを取り出す。
「はい、ムウ様。」
「ありがとうございます…やはり貴女が煎れたお茶はおいしいですね」
ムウはのお茶を飲みながら景色を眺めた。
「それから、これも…お口に合うか分かりませんが…」
そう言って差し出されたのは、何とも可愛らしい形をしたクッキーだった。
「おいしそうですね…いただきますよ。」
「どうですか??」
「すごくおいしいです!!」
「よかったぁぁ」
おいしそうにクッキーを食べるムウを見て安心する。
他愛もない会話をし、景色を眺めているうちに、かなりの時間がたっていた。
「…今日は本当にありがとうございました。おかげで、日頃の疲れが取れましたよ。」
「そんな…私のわがままで来て頂いたのに…」
は俯いて話す。
そんなをムウは優しく抱き寄せた。
「あっ…あの…ムウ様…」
「あの歌…」
「えっ?」
「貴女がいつも歌う歌を全部きかせてくださいませんか?」
ムウは真剣な瞳でに言った。
「恥ずかしいです…でも…ムウ様のためなら…」
そう言っては静かに歌いだした。
『朝の光は自愛に満ちて…時は穏やかに刻まれていく。
貴方のいる朝は本当に特別なの…
春風は遠く…でも色とりどりの花々は暖かい日差しを待っている…
鳥は歌い、風は優しく、私は貴方を想い続ける…
それは悲しいことではなく、それは幸せなこと…
愛しい貴方は私を見つけてくれるから…
この命はいつか消えても…
私は花となり…貴方のもとへと帰ろう…
貴方は見つけてくれるから…』
歌い終わると、はふっとムウを見上げた。
ムウは優しい笑みを浮かべている。
「…私は貴女がどんな姿でも見つけられそうです…」
「えっ?」
「その…つまりですね…私は貴女を愛しているということです。」
赤くなりながらムウは言った。
「私も…ムウ様が大好きです!」
はムウの胸に顔を埋めながら言った。
そして微笑む二人の姿。
「おはようございます、」
ムウは自分の横に眠るに声をかける。
「あっ…おはようございます…ムウ様」
は微笑んでムウの頬にキスをする。
「いつもと同じ朝のようですが…やはり違いますね。」
「幸せです…私…ムウ様と朝を迎えられることが…」
「私もですよ…。愛しています…貴女だけを…」
ムウは優しくにキスを落としていった。
『知っていましたか?私にとって貴女と目覚める朝が至福だと』