「お前に・・・触れてもいいか?」
窓から見える街のイルミネーションを見つめているに
シュラは後ろからそっと声をかけた。
は振り返ることなく、窓に映るシュラを見つめながら微笑む。
「・・・・」
シュラはすっと座っていたソファから立ち上がり、音もなくの背後に近付く。
そしてその細い腰に腕を回した。
「シュラ・・・」
「・・・何だ?」
「私、何も言ってないわよ?」
「そうだな・・・だが惚れた女がそんな格好で近くにいれば
我慢も出来んだろう?」
そう言いながらもは自分の首筋に顔を埋めるシュラに苦笑した。
ここはシュラが住んでいるマンション。
最上階にあるこの部屋から見える光景は、普段一人で過ごしているシュラにとって
酒の肴にもなるし、下界から少し離れて考えに耽るには丁度よかった。
そしては少し赤毛の髪を高く結い揚げ、
背中の大きく開いた真紅のドレスを着ていた。
そして、スカイブルーの大きな瞳で射抜くようにシュラを見つめる。
「ねぇ・・・・・・」
「ん?」
「デスマスクが怒るわよ?」
「そうだな・・・」
「それにアフロディーテも・・・」
「ああ・・・」
「分かっているの?」
「ああ、分かっている。だから少し黙れよ・・・・」
「っ・・・」
そう言っての唇を塞ぐシュラ。
そのままシュラは自身の腕の力を少し強め、を抱き締める。
「・・・・・・っふ・・・・・・ん・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・っ!?」
ふいにシュラは自分の唇に鋭い痛みを感じ、顔を離す。
の唇からは一筋の紅い血が流れていた。
「・・・・・・・・・やったな」
「ふふっ」
そう笑いながらペロリとその血を舐める。
その妖艶さにシュラは眩暈を覚えた。
は決して自分のものにはならない。
それは分かっている。
自由奔放で、誰にも捕らわれないに恋をしているのは
シュラだけではなく、デスマスクやアフロディーテもそうだった。
一晩、と共に過ごせるかどうか・・・・
その賭けは、まだカジノの方が当たる確立が高い。
シュラは己の唇を指でなぞると、そのままを抱きかかえた。
「さて・・・お姫様の気が変わらない内に・・・・・・」
そう言うと、その足は寝室へと向かう。
シュラはベッドにを寝かせた。
そして耳朶、首筋、鎖骨と唇を這わせていく。
「くすくすくすくす・・・・・」
ふと頭上から聞こえるの笑い声。
その声に少し怪訝そうにを見上げるシュラ。
「・・・・・・何が可笑しい」
「いいえ、貴方も・・・もっと一途に想ってくれる人を探せばいいのにと思って。」
「俺はお前がいいんだ。」
「そうね・・・デスマスクやアフロディーテもそう言っていたわ。」
はそう言いながら上半身を起こす。
シュラはそんなを見つめながらも手を動かす。
すとんっとの肩から服が滑り落ちた。
胸元に光るそのペンダントを見て苦笑する。
「まだ持っていたのか?」
「ええ、悪いかしら?」
「いや、むしろ光栄だな・・・だが・・・この2つは気に喰わん。」
そう言ってペンダントトップを指差す。
のしているペンダントトップは3つ。
一つは剣をイメージさせる十字架。
もう一つは中心にアクアマリンが入っている薔薇。
最後の一つはルビーの眼をしたケルベロス。
シュラが指差したのは薔薇とケルベロスだった。
「私は気に入っているわ。だって・・・これは貴方達を繋ぐ鎖ですもの」
そう言って微笑むは、どこか悪戯な視線でシュラを見た。
「じゃあは俺達3人のものだな・・・」
カタンと音がした方向を見る。
その先にはドアに寄りかかり薔薇をクルクルと廻しながら立っているアフロディーテと
腰に手を当て、タバコを吹かしているデスマスクの姿があった。
「お前ら・・・・・・」
「やぁ、シュラ。を独り占めしようなんて考えは甘いよ。
私達だってが欲しくて堪らないんだ。」
すっと手に持っていた薔薇を投げるアフロディーテ。
その薔薇はの手元にふわりと落ちる。
「そうだぜ?お前だけいい思いをするってのはマズイよな。」
にやっと笑いシュラを見るデスマスク。
そしておもむろにポケットからチャリンと音を鳴らして何かを出した。
シュラは立ち上がり、デスマスクとアフロディーテの近くまで歩み寄る。
「・・・・・・こんな事の為に合鍵を渡していたわけではないのだがな」
「そうだろうね。君が『抜け駆けしないように』・・・なんて言っていないから」
アフロディーテは苦笑しながら髪を掻き揚げるシュラを見てくすっと笑う。
「たまにはいいだろう?俺はお前達と違ってに触れる機会が少ないんだ。」
「そうか?そりゃあ悪かったな〜邪魔しちまってよ」
デスマスクはくくっと笑いながらシュラに言う。
シュラははぁっと軽くため息をつくが、
この友人達は何を言ってもここから立ち去る気が全くない事が
しみじみと分かった。
「いいじゃない?・・・今日は凄く気分がいいわ。
だから3人とも相手をしてあげる。さぁ、来て。
シュラ・・・デスマスク・・・アフロディーテ・・・・」
3人がを見る。
その瞬間、3人とも息を呑んだ。
髪を梳くその仕草。
丁度その髪で胸を隠しているような状況で、手招きをするに
欲情しないものはここにはいなかった。
色白の肌に真紅の潤んだ唇で3人の名を呼ぶ。
その姿は何よりも妖艶で美しかった。
「「「・・・」」」
同時に名を呼び、3人はを囲むようにベッドに腰掛けた。
アフロディーテはの髪を一房手に取り口付ける。
デスマスクはその真紅の唇を味わう。
そしてシュラは滑らかな肌の感触を楽しむ。
「お前だけを愛している・・・・・・」
「愛しているよ・・・」
「・・・愛してるぜ・・・・」
「愛しているわ・・・・シュラ、デスマスク、アフロディーテ・・・・
3人とも愛しているわ・・・・くすくすくす」
これから始まる時間を想像しただけでも快感が走る。
そう想いながらは3人にその身を委ねていった。
夜明けまではまだたっぷりと時間がある・・・・・・