「はぁ・・・」
カミュはそう小さくため息をついた。
それに反応したのは、書類と睨めっこしているアイオロスだった。
「おお!?どうしたんだ???」
「ん・・・いや・・・。」
今は執務中だった事に気がついたカミュは、
努めて冷静にアイオロスに答える。
「可愛い姉の事か?」
「・・・・まぁ、そんな所だな」
「俺んとこは弟だが、兄弟ってのはいいぞ!!」
「まぁ、そうかもしれんが・・・」
「腹違いだったか?」
「そうだ。」
「しかもアテナと同じ、日本の血を引いてるんだっけか?」
「ああ。」
「だが、姉弟には変わらないし、やっぱりいいもんだぞ!!」
一緒に鍛練したり、飯食ったりしてさ〜っと豪快に笑うアイオロスに
カミュは苦笑していた。
そんな簡単な悩みじゃない。
「でで?何が訳が分からんのだ?」
「それが・・・」
ここは親友でもあり年下の弟もいるアイオロスに
相談に乗ってもらう事にしたカミュ。
「カミュ!!」
「ああ、おはよう、」
「徹夜したのね!?・・・クマ出来てる」
「どうしても続きが気になる本があったから」
「ちゃんと寝ないとお肌によくないよっ」
そう言って、ポカっと肩を殴られつつもカミュは
が差し出す紅茶を受け取った。
本当に自分の姉なのかと思うほど、は幼い行動をよく取った。
が姉だという事が分かったのはグラード財団の情報だったのだが・・・
どうやらカミュには腹違いの姉がいるらしい
その噂をどこからか持ってきたミロがアテナに頼んだら
何と、自宮で女官をしていただったという訳だ。
本人は知っていたらしいが、敢えて何も言わなかったらしい。
とにかく、その事を知ってからも、は今までとあまり変わらず
カミュ達の面倒を見ていた。
「ところで・・・」
「なぁに?」
「近頃帰りが遅いようだが・・・」
「ドキッ!!」
「今、声に出してたぞ」
「は・・・ははははは」
「何をしているんだ?」
「え・・・と・・・」
「私にも言えない事なのか?」
「う〜ん、言ったら多分カミュ暴れるから」
そう言ってフンフンと鼻歌を歌いながらキッチンへと向かう。
言ったら私が暴れるだと?
カミュはそんな事を頭に浮かべながらが運んできた朝食を食べた。
「はいるのか?」
「サガか?」
「ああ、カミュ。・・・今日は休みなのか?」
「いや、これから上にあがるが・・・」
「そうか」
「まだ食事をしていないのなら貴方も食べていけばいい。いいだろう?」
「ぅえ!?う、うん、いいけど?」
「・・・そうか。ならコーヒーを頂きたい」
サガはそう言うとカミュの目の前に座る。
カミュと同じ朝食をサガの目の前に置くと、二人の間に座って
自分もコーヒーを飲む。
「ん?は食べないのか?」
「ううん、た・・・食べるよ?」
「・・・どちらが年上か分からんな」
サガはその光景を見て思わず口にした。
カミュはその言葉に笑うとはぷぅっと頬を膨らませた。
「ふっそうだな、確かには姉だが私とそう変わらない。」
「カミュまで!」
「だが、私の姉には間違いない。の結婚相手はこの私が認めた・・・」
「またそんな事を言う!」
「ならばお前に認められるような男になれるよう努力しよう」
「っ・・・サガ!!!」
カラン
音を立ててフォークを落とすカミュ
慌てる
涼しい顔でコーヒーを口にするサガ
「ま、まさかの帰りが遅いと思っていたら・・・」
「えっと・・・カミュ?」
「そうなのか!?!!」
「ちょっ・・・カミュ!?」
ガクガクとの肩を揺らしながらカミュが目を見開く。
「何だ、まだ言っていなかったのか?」
「サガまで!!」
「!私の問いに答えろ!」
「ちょちょっ!?くっ・・・クールになって!?カミューー!!」
「・・・・やめろ、カミュ。が苦しそうだ」
カミュの手首を握りの肩から外すサガに
カミュはキッと冷たい視線をサガに向ける。
「サガ、貴方は私の姉を!?い、いつから!?」
ふっと視線を合わせるサガと。
そして二人とも同時に声を出した。
「「・・・1年前から」」
「なっ・・・」
「カミュ、を責めるな。私が」
「違うよ、サガは何もしてないでしょ?」
「だが・・・」
二人で見つめ合っている状況にカミュはふぅっとため息をついた。
「ね、ねぇカミュ?」
「・・・・何だ」
「あの・・・」
「」
そっとの肩に手を置いて、サガはカミュに静かに話しだした。
「いつかは分かる事だった・・・が、これだけは知っていて欲しい。私は真剣にを愛している。」
「サガ・・・私もサガが好き。だからカミュ、許して」
完全に二人の世界に入ってしまった姉とサガに
カミュは逆に冷静になって言った。
「・・・・サガ、本当だろうな?」
「カミュ、本当なのだ。分かってほしい。私達の付き合いを許してくれないか」
自分に頭を垂れるサガに、カミュは腰に手をやってまたため息をついた。
「とそう言う訳なんだ」
「ははははっ!」
「アイオロス、笑いごとじゃない。」
「まぁ、サガはあれで生真面目だから大丈夫なんじゃないのか?」
「私が言っているのは、もしとサガが結婚なんかしてみろ・・・」
「カミュがサガに【お義兄さん】と言っている姿もなかなか面白いんだがな〜」
「・・・・・・・・・・」
相談する相手を間違った。
カミュはここでもため息をついた。
「すまんすまん、で結局?」
「結局、その日は私もサガも執務を休んで延々話していた」
「それで?」
「一応は認めた。」
「そっか〜うんうん、いいんじゃないのか?」
「簡単に言わないで欲しい・・・腸煮えくり返りそうだ・・・」
「だから最近のお前はサガに冷たかったのか〜」
そう言って腹を抱えて笑うアイオロス。
カミュは先に失礼すると言って執務室を出た。
大切な姉の幸せならば素直に認めなければなと
半分以上諦めた面持ちで帰宅する。
帰ったら、多分サガがいるのだろう。
今日はと三人で食事をしようと言っていた。
取り合えず二人の付き合いは認めたのだが・・・
「・・・・まぁ、もうしばらくは結婚は認めてやらん」
ふっと笑ってカミュは宝瓶宮への道を歩いていった。
( 2010.09.12 )