El destino del pensamiento
(想いの行き先)

−前編−







いつでも側にいたから・・・・・幼馴染だから気づかなかったのかも。


シュラだってもう立派な一人の男性だって事に・・・・・。


********************************


妹のような存在だった・・・・幼馴染みの


だがいつの間にか俺の中では・・・・・。


********************************





シュラを追って聖域に来た、小さい頃はシュラの後ろをくっついていた。

けれど今の彼女は教皇となったサガの実務を補佐する女官。

美人というよりは可愛いタイプで、年齢はシュラより2つ年下だがもう少し幼く見える。

けれど何時でも笑顔を絶やさない彼女は聖域でも人気が高かった。





「これで全てです、サガ。」

報告書のチェックを終えたが、その書類を纏め上げてサガへ渡す。

「いつも済まないな、。だがお陰で大分助かっている。」

受け取ってサガは彼女に労いの言葉をかける。

そんなサガにはいつものように笑顔を浮かべた。

「ううん、気にしないで。サガが少しでも楽になればと思ってるから。」

教皇となったサガは双子の黄金聖闘士の時よりも、多忙を極めていた。

そんなサガをシュラやムウなども手伝ってはいたが、任務があれば聖域を離れなくてはならない。

そんな時、聖域で働き始めていたの実務能力を前教皇であるシオンが目をつけ、サガの補佐役と

推薦したのだった。

「そうか・・・・嬉しいが、に無理をさせるとシュラが黙っていないからな。」

「もう・・・シュラは何かと子供扱いするんだから。自分の体調管理ぐらい出来るのに。」

シュラにとっては幼馴染みかつ妹のような存在だから・・・・何かと心配するのも無理はない。

小さい頃は彼の後をついて回っていたのだから。

むうと口を尖らせているに、サガは内心思う・・・・こういう所がシュラが心配する所以なのだろうと。

、そろそろ戻るといい。後は私だけで十分だから。」

「わかりました・・・サガ、くれぐれも無理はしないでね。」

執務室の窓の外を見ると、すっかり闇に包まれていた。

の部屋は聖域・十二宮の1番上にある執務室から歩いてすぐの所にある。

アテナによって聖域に結界が張られているとはいえ、何かあってはいけないと執務室の近くに部屋を

用意した。

シュラのいる魔羯宮からもそれほど遠くはなく・・・・・。

「お休みなさい、サガ。」

「あぁ・・・お休み、。」

机周りを整理して、はサガに挨拶をして執務室を出て行った。

そしてと入れ違いに、執務室にシュラの姿が。

「夜遅くに済まない、サガ。」

「気にするな、シュラ。例の件は上手くいったか?」

シュラはサガとアテナから極秘の任務を請け負って、1ヶ月程聖域を離れていた。

少し疲れが見えるシュラだったが、目立った怪我もしておらず無事に完了したようで。

「あぁ・・・それでその報告なんだが・・・・。」

シュラはサガの正面に座り込むと、任務の結果を報告し始めた。

二人が話し始めた頃、は執務室に忘れ物をしたのを思い出して来た道を引き返し始めていた。

(あれがないと落ち着かないから・・・・。)

スペインにいた頃、お祭りに一緒に行った時にはシュラにおもちゃではあるが指輪を買ってもらった。

シュラの気持ちが籠もっているからと、ずっと大事に肌身離さずに持っていたもの。

今は小指にしか嵌められないが、それがあったからこそシュラの後を追って聖域へ来ることが出来た。

今日は珍しくその指輪を外して仕事をしていたので、すっかり忘れてしまい・・・・。

(あれ?サガ以外に誰かいる・・・。)

執務室の前まで来ると、は中から聞こえる声に耳を澄ませる。

サガと話をしている声の主に、の顔に笑みが浮かぶ。

そしてドアのノブに手をかけようとした瞬間・・・・・。




「・・・・好きな人か・・・・まあ、いる。」




シュラの思わぬ告白にの身体は固まってしまう。

(シュラに・・・・好きな人が・・・。)

ずっと幼馴染だと思っていたが、考えたらシュラももうも子供ではない。

好きな人がいてもおかしくない年齢である。

は伸ばしかけた手を下ろすと、その場から立ち去っていく。

衝撃を受けた心を表すかのように足取りも重く・・・・。

「で、気持ちは打ち明けるのか?」

「いや・・・もう少し、気持ちがしっかり固まってからだ。好きだと気づいたのは割と最近なんでな。」

が聞いていたとは知らず、サガとシュラは話を続けていた。

この件が聖域に一騒動起こすとは夢にも思わず。





自分の部屋に戻ったは、そのままソファへと倒れこむ。

そしてクッションに顔を埋めては、静かに泣き出した。

シュラの告白で、もまた気づいた彼への気持ちに。

(こんな形で気づくなんて・・・・シュラ・・・・貴方が好き。)

幼馴染としてではなく、一人の異性として。

自覚したばかりの気持ちを果たしてシュラに伝えていいのか、今のにはわからなかった。






続く

――――――あとがき――――――

伊吹水澪様からこんな素敵な夢を頂きました!!
本当にありがとうございます!!
後編が楽しみですv