真実の中の真実

闇の中の闇

光の中の光

全てが幻の世界にあったのなら・・・





第13話・・・苦痛と涙







「ああ、こんなにも澄んだ空は久しぶりだな・・・・」

漆黒のローブを纏って、見上げるのは満天の星空。
冥界では見られない、幾奥の星の瞬きには眼を細めた。

目前には12宮、最初の宮である白羊宮。

カツ・・・カツ・・・



「こんな夜更けにどなたです。誰であろうと、ここを通す事は出来ま・・・・!?」

「ムウ・・・起きていたの?」

「その声はっ・・・ですか!?」

「ああ、そうか。顔を貴方に見せた事はなかったか?」


ふわりとフードから出ていた漆黒の髪が夜風に舞い上がる。


「・・・・どうやって」

「冥王の許しを得て・・・ここに来た。アテナに会う為に・・・」

「・・・・・貴女は今や冥王の冥闘士。」


ムウが片手を上げて構える。
そして、全身を黄金の小宇宙が覆い、その力が手に集中し放たれようとした瞬間、
辺りに温かい小宇宙が充満する。


【ムウ、が来たのですか?】

「アテナ!?」

【ムウ、をアテナ神殿へ・・・時間がないと思います。早く連れてきてください。】


アテナの小宇宙による命令に、ムウは腕を降ろす。
そして、すっとの方へと歩いて行く。


「貴女にも聞こえたのでしょう?」

「ああ・・・聞こえた。」

「・・・・そう言う訳です・・・」

「・・・・分かった」


そう言うと、はフードを深深と被り、ムウの後ろを付いて12宮の階段へと向かった。














「・・・・

「アテナ・・・・」


アテナ神殿、謁見の間
そこには、ムウ以外の12人の黄金聖闘士がいた。
ははぁっと深くため息をつくと、ざっとアテナの前へと膝まづいた。


「貴女に残された時間は・・・そう長くはないのでしょう?」

「・・・・12日間」

「!!・・・・それではもう時間がありません」

「そうです・・・・」

「アテナ!?一体どういう事なのか説明を・・・・」

「サガ・・・分かりました。カミュ、あれを・・・」

「はっ・・・」


そう言ってカミュがアテナへとあの書物を手渡す。
するとアテナはそれをサガへと渡した。


「今から私達がやろうとする事です・・・」

「こ・・・れは・・・」

「説明したまえ・・・」

「あ、ああ。」


アテナから手渡された本を口に出して読むサガ。

二つの衣を共鳴させる為に
黄金の小宇宙と女神の小宇宙を注ぎ込む事。
それにはすでに闇に染まった冥衣をまずは浄化させないといけない事。
それにはそれを纏う者が未だかつてない苦痛を得る事。
精神力と小宇宙だけがそれを左右する。
全ては女神とその最高峰の聖闘士の想い次第。

それを聴き終えた黄金聖闘士達が次々とに語りかける。


「苦痛・・・ですか」

「ええ、ムウ。大抵、その苦痛に先代達は死んでいたらしい・・・」

、君はそこまでしても・・・」

「アフロディーテ、私はアテナの聖闘士でもあるのよ?」

「だが・・・お前が耐えられるとは・・・」

「シュラ、貴方はいつも私を心配してくれる。でも、これは古からの宿命。」

「成功などした事ないのだろう?」

「アルデバラン、それでも私はやる。」

「・・・為すべき事を為すのだな・・・君は」

「ええ、シャカ。この時の為に私はここに来たのよ。」


はパサっと音を立てて、フードを落とす。
漆黒の髪、深い蒼の眼、深紅の唇、陶器の様な白い肌。
その場にいた、全員の聖闘士が動きを止める。


「・・・・

「何も言わないで欲しい、サガ。」

「一人で抱えていたのか?」

「まぁ、自覚してからだけどね?カノン。」

「・・・・・・・・何とも言えんな」

「貴方の技よりキツイらしいからね、ミロ。」

「儂はそんなお主を見たくはないぞ・・・」

「童虎、私は平気。」

「・・・・・けっ」

「ふふふ、あんたは相変わらずだね、デスマスク。」

「・・・・俺達に何か出来る事は・・・」

「アテナに力を貸して欲しいわ、アイオリア」

、君を苦しませるのは・・・」

「アイオロス、私だけではないのよ・・・」

よ・・・私達にはこれしか出来ない。」

「シオン。貴方達の力を私に貸してくれ・・・」


そう皆に言うと、時間だと言わんばかりにはアテナを見つめた。
アテナは静かに頷くと、側にいたシオンに合図を送った。


「さぁ、・・・シオン、頼みます。」


は無言のまま頷くと、左手をかざす。
そこには、深い闇色の冥衣が現れる。


「・・・・風鳥よ・・・汝の主の元へ現れよ・・・」


そうシオンが言うと、の右側が白銀に輝く。
そこには風鳥座の聖衣が現れていた。


「アテナ・・・私はまだこの子に見放されてはいないようですね」

「ええ!貴女は大切なアテナの聖闘士なのですよ。聖衣が喜んでいるのが分かります。」

「貴女の言葉を聞けただけで、私は覚悟が決まりました。大丈夫です・・・これ以上は・・・」

「はい。私も覚悟を決めています。」


そう言うとアテナは黄金の杖を掲げた。
辺りに広まるアテナの小宇宙。

それに共鳴するように輝く風鳥座の聖衣。
それに反発するように輝く天剣星の冥衣。


「っく・・・・」

!!」

「つ・・・続けて・・・アテナ!!」

「・・・・はい!!カミュ、サガ、カノン!!」

「「「はっ!!」」」

「どうかを押さえて下さい!!」

「アテナ!?」

「一体・・・」

「・・・・・・これからだ」

「っ・・・・がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


カミュが言い終わった瞬間、耳を塞ぎたくなるような悲鳴がの口から発せられる。
カミュはを後ろから鷲掴みにし、サガとカノンはの両足を抑える。
黄金聖闘士3人がかりと言うのに、は体を動かし、腕を伸ばす。


「アテナ!?」

を・・・救うのです!!!」

「でっ・・・ですがっ!!この苦しみようはっ!!」

「耐えるのです!!!!」

「あああああああ!!!!ア・・・テナァァァァァァ!!!!!」


カァッと眼を見開き、アテナへと腕を伸ばす。
ギリギリと痛む自身の腕にカミュが眼をやると、の指が食い込んでいる。


っ!!」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「くっ、カミュ!!」

「堪えるんだ!サガ!!」

「何だっ!これは!!」


の足を抑えているサガもカノンもその尋常ではない苦しみに顔を背ける。
の体を支える3人の手は燃えるように熱い。
それでもアテナの体力との精神力を信じるしかなかった・・・・


ポタ・・・ポタ・・・・


ハッとして3人がに眼をやると
その蒼の瞳からは涙が流れていた。
苦痛による涙なのか・・・


っ!!」

「ぐっ・・・・あああああああ!!!わたっ・・・しはぁぁぁぁぁぁ!!!!」


苦痛に歪む顔で叫ぶ
カミュもサガもカノンも・・・他の黄金聖闘士達も
全員がアテナとを信じてその小宇宙を高めた。